春の抜け毛・脱毛と漢方
髪は血の余り、4体質で見立てる薬剤師の処方指針
「シャンプーのときに、排水溝に大量に毛が溜まっていてゾッとした」「ドライヤーをかけ終わったあと、床に黒い毛がたくさん落ちている」「分け目が広くなって、つむじが透けて見える気がする」「美容師さんに『前より細くなりましたね』と言われた」「家族に『ボリュームが減ったね』と指摘されてショックだった」。
ゴールデンウィーク直前のこの時期、当薬局にもっとも増えるご相談のひとつが、こうした春の抜け毛・薄毛です。30〜50代の働く女性が中心で、新年度の緊張が一段落して鏡をじっくり見る余裕が出るタイミング、シャンプーの抜け毛量がはっきり増える4月後半に「これは放っておけない」と気づかれる方が多くなります。
漢方では古くから、「髪は血の余り(血余・けつよ)」と捉えます。約2000年前の『黄帝内経』に記された考え方で、生命活動に血を使った余りが頭髪を養うとされてきました。さらに「腎は精を蔵し、その華は髪に在り」とも記され、髪のツヤ・色・抜けやすさは、血と腎の状態を映す鏡と位置づけられています。
「抜け毛は遺伝だから仕方ない」「年齢のせい」と片付けられがちなこの症状ですが、漢方の視点では気・血・腎の状態が髪に出てきたサインであり、体質から見立てて整えていくことができます。当薬局では、春の抜け毛を血虚(けっきょ)=髪を養う血そのものが不足したタイプ、肝鬱気滞(かんうつきたい)=ストレスで血の巡りが滞ったタイプ、腎虚(じんきょ)=加齢で髪の土台が弱ったタイプ、心脾両虚(しんぴりょうきょ)=過労と思い悩みで気血が消耗したタイプ——の4つの体質軸で見立てます。
監修
柳澤 謙行(やなざわ けんこう)/銀座漢方天風堂薬局 薬剤師
薬剤師歴45年以上。前職を含めのべ数万件の漢方相談に従事。中医学理論に基づく体質の見立てと煎じ薬の提案を得意とし、女性の更年期・産後・自律神経領域で皮膚科・婦人科・心療内科の処方との併用相談も数多く担当。
この記事でわかること
- なぜ4月後半〜5月に抜け毛のご相談が増えるのか、その3つの背景
- 漢方の古典が伝える「髪は血の余り」の意味がわかる
- 4体質のどれに自分が当てはまるかセルフチェックできる
- 加味逍遙散・四物湯・八味地黄丸・帰脾湯の使い分けがわかる
- ミノキシジル外用・AGA治療との安全な併用設計
- 産後脱毛・授乳中の漢方の選び方
- 髪に効くツボと、今日から始められる「髪を養う食養生」
- 抜け毛の裏にある更年期・妊活との接点
なぜ4月後半〜5月に抜け毛が増えるのか
4月後半〜5月の抜け毛集中には、3つの背景が重なっています。
1. 「換毛期」の名残としての季節性脱毛——人間の頭髪は、成長期(3〜7年)→退行期→休止期というヘアサイクルを繰り返します。動物に見られる春と秋の換毛期の名残として、人間にも春と秋に休止期へ入る毛包が一時的に増える傾向があります。通常、頭皮全体の毛包のうち休止期にあるのは10%以下ですが、この時期はやや増えるため、シャンプー時の抜け毛量がはっきり増えます。これ自体は生理現象で、3か月程度で落ち着くことが多いです。
2. 春は「肝」がもっとも高ぶり、血を消耗する季節——漢方では春から初夏にかけて肝が活発に働きます。肝は気の巡りと血の貯蔵を司る臓で、新年度の緊張・人間関係のストレス・歓送迎会の連続で肝に負担がかかると、肝に蓄えられた血が消耗します。髪を養う「血の余り」がそもそも減ってしまうため、抜け毛が顕在化しやすくなります。
3. 花粉症・寒暖差・睡眠の乱れによる頭皮環境の悪化——4月は花粉が大量に頭皮に付着し、痒み・炎症・フケを誘発します。10度以上の寒暖差で自律神経が乱れ、頭皮の血流も低下します。歓送迎会で帰宅が遅くなり、睡眠時間が削られると、髪を作る時間そのものが減る——これらが重なって、もともとの体質傾向が一気に表に出てきます。
漢方の古典が伝える「髪は血の余り」
「抜け毛と漢方が、なぜ関係するのですか?」——当薬局でいただく質問のひとつです。
約2000年前にまとめられた中国医学の古典『黄帝内経』には、髪についての二つの重要な記述があります。ひとつは「肝は血を蔵し、髪は血の余り(血余)」。生命活動に必要な血を心臓・脳・子宮など各臓器に送り、その余った分が頭髪を養うという考え方です。血が十分に巡っていれば、髪はツヤとハリを持ち、しっかりと根を張ります。逆に血が不足すれば、まず髪に表れます。
もうひとつは「腎は精を蔵し、その華は髪に在り」。腎は生命エネルギー(精)を蓄える臓で、髪のツヤ・色・抜けやすさはこの腎の状態を映す鏡とされます。白髪・抜け毛・髪が細くなる現象は、加齢に伴う腎の精の減少と密接に結びついています。
つまり漢方では、髪は「頭皮だけの問題」ではなく、全身の血と腎の状態が映し出される最後の場所として扱います。育毛剤や頭皮ケアだけでなく、体の内側から血と腎を整える方向で見立てるのが漢方の発想です。
医療機関の受診が必要な方
局所的に髪が円形に抜けた・地肌に赤みや痒みが強い・シャンプー時の抜け毛が3か月以上明らかに増え続けている・産後12か月を過ぎても回復しない場合は、まず皮膚科または婦人科をご受診ください。甲状腺機能低下症・鉄欠乏性貧血・自己免疫疾患による脱毛は、血液検査で原因が見つかります。漢方は補助的に併用する形で安全に力を発揮します。
漢方では春の抜け毛を4体質で見立てる
同じ「抜け毛」でも、根っこの体質は人それぞれ。当薬局では4つのタイプに分けて見立てます。
① 髪が細く色が薄いタイプ(血虚)
髪が細く弱々しい、色が以前より薄くなった、ツヤがない、爪が割れやすい、唇や顔色が青白い、立ちくらみがある、月経量が少なくなった、寝つきが悪い——髪を養う「血」そのものが不足したタイプ。働く30〜50代女性で、過労・ダイエット・授乳・月経過多があると顕著に出ます。当薬局でもっとも多くお会いするタイプです。
代表処方:四物湯、当帰芍薬散、十全大補湯、人参養栄湯など。四物湯は当帰・川芎・芍薬・地黄の4味で構成された血を補う基本処方で、髪・肌・爪・月経のすべてに関わる「血」を底上げする方向で働きます。
② ストレスで部分的に抜けるタイプ(肝鬱気滞)
仕事や人間関係のストレス後に急に抜け毛が増えた、円形に抜けたことがある、頭皮が硬くこわばっている、月経前後に抜け毛が悪化する、イライラと落ち込みが交互に来る、ため息が増える——気の巡りが滞り、頭皮への血流が悪くなったタイプ。新年度のストレスが強い時期に出やすく、円形脱毛症の入り口にもなります。
代表処方:加味逍遙散、四逆散、柴胡疎肝湯、女神散など。加味逍遙散は気・血・熱を同時に整える女性向きの処方で、ストレス由来の抜け毛・冷えのぼせ・PMSをまとめて整える方向で組み立てられています。
③ 加齢・白髪を伴うタイプ(腎虚)
抜け毛と同時に白髪が増えてきた、髪全体のボリュームが落ちた、足腰が冷える・だるい、夜中にトイレで目が覚める、耳鳴り・物忘れ、腰痛、性欲低下——加齢で腎の精と血が同時に消耗した「肝腎両虚」のタイプ。40代後半以降の女性、慢性的な過労がある方に多く出ます。
代表処方:八味地黄丸、六味地黄丸、知柏地黄丸、杞菊地黄丸、七宝美髯丹など。腎を補いながら、髪の土台となる精と血を底上げする方向で組み立てます。長期的にじっくり整える処方群で、3〜6か月以上の継続が前提となります。
④ 過労・思い悩みで抜けるタイプ(心脾両虚)
考えごとが頭から離れず眠れない、夜中に目が覚める、食欲が細い、胃がもたれやすい、動悸・不安感、疲労感、顔色が冴えない——過労と思い悩みで気と血の生成元(脾)が弱り、心も消耗したタイプ。介護・育児・受験のサポートなど、精神的負担が大きい時期に多く出ます。
代表処方:帰脾湯、加味帰脾湯、酸棗仁湯、補中益気湯など。脾を立て直して気血の生成を回復させながら、心を養って眠りを整える方向で組み立てます。「眠れるようになったら抜け毛が減ってきた」という変化が出やすいタイプです。
症状の出方でわかる体質の傾き
抜け毛は「どのように抜けるか」で体質が読み取れます。当薬局では初回のカウンセリングで、抜ける場所・抜ける時間帯・前後の症状・睡眠と月経の状態を細かくうかがいます。
| 主な症状の出方 | 傾きやすい体質 | 代表処方の方向 |
|---|---|---|
| 髪全体が細く色が薄い、ツヤがない | 血虚 | 四物湯、当帰芍薬散 |
| 分け目・つむじが広がってきた | 血虚+腎虚 | 十全大補湯、八味地黄丸 |
| ストレス後に急増、円形に抜けた | 肝鬱気滞 | 加味逍遙散、柴胡疎肝湯 |
| 月経前後に悪化、PMSも強い | 肝鬱気滞+血虚 | 加味逍遙散、女神散 |
| 白髪も同時に増えた、足腰のだるさ | 腎虚(肝腎両虚) | 六味地黄丸、八味地黄丸 |
| 眠れない・思い悩み・食欲低下 | 心脾両虚 | 帰脾湯、加味帰脾湯 |
| 産後2〜6か月のごっそり抜け毛 | 産後血虚 | 当帰芍薬散、十全大補湯 |
7つのサインでセルフチェック
以下のうち3つ以上が今春から続いている方は、単なる「季節性の抜け毛」ではなく体質からの見立てが必要な時期にきています。
- □ シャンプー時の抜け毛量が、明らかに以前の1.5倍以上に増えた
- □ 分け目・つむじの地肌が、以前より広く透けて見える
- □ 髪が細くなった、ハリ・コシ・ツヤが落ちた
- □ 抜け毛と同時に、白髪も増えている
- □ 月経量が減った、または周期が乱れている
- □ 眠りが浅い・夜中に目が覚める日が週3回以上ある
- □ 過去半年で5kg以上の体重減少 or 連続したダイエットがあった
ミノキシジル外用・AGA治療との併用設計
「皮膚科でミノキシジル外用を始めたが、3か月使っても変化が薄い」「AGAクリニックの治療と漢方を併用したい」「サプリメントだけで済ませたい」——当薬局でご質問の多い併用相談です。
結論から言うと、多くの場合、漢方は西洋医学の脱毛治療と併用可能です。ミノキシジル外用は男女ともに厚生労働省認可の発毛成分で、漢方薬との明確な相互作用報告はありません。皮膚科でAGA治療を受けている方が、体質の土台を整える目的で漢方を併用する例は当薬局でも多くあります。
併用の基本設計(当薬局の考え方)
- ミノキシジル外用→ 局所の血流改善と発毛促進という攻めの役割
- 育毛シャンプー・サプリメント→ 頭皮環境と栄養補助
- 漢方の煎じ薬→ 髪を養う血と腎の土台を整える守りの役割
- 3〜6か月で改善傾向が見えなければ、必ず皮膚科または婦人科で原因疾患の再評価を
併用時に気をつけたいこと
- フィナステリドの内服は女性型脱毛症には効果がなく、妊娠中・授乳中の女性には禁忌です。万が一処方を勧められた場合は必ず妊娠の可能性をお伝えください
- 複数の漢方を併用する場合、共通の生薬「甘草」が重複し、偽アルドステロン症(低カリウム血症)のリスクが上がります。一般的に1日の甘草量が2.5gを超えると注意が必要です。利尿薬・降圧薬・ステロイド剤を服用中の方は現在の処方を必ずお伝えください
- 急激にごっそり抜ける・地肌に強い炎症・全身の脱毛がある場合は、まず皮膚科で甲状腺機能・鉄欠乏性貧血・自己免疫疾患の血液検査を受けてください
ご相談時には、現在使用中の外用薬・内服薬・サプリメント・育毛剤・処方薬をすべてお伝えください。飲み合わせを確認したうえで、あなたに合う処方を見立てます。
産後脱毛と授乳中の漢方
「産後3か月から急にごっそり抜け始めて、生え際の薄さが心配」——産後の女性から特に多くいただくご相談です。
産後脱毛は、出産後2〜6か月にピークを迎え、6〜12か月で自然に回復することが多い生理現象です。妊娠中に高まっていたエストロゲンが急激に低下することで、本来抜けるはずだった髪が一気に休止期に入るために起こります。
漢方の視点では、出産は大きく血を消耗する出来事で、典型的な「産後血虚」の状態です。さらに授乳で気血を奪われ、寝不足で気が消耗し、育児ストレスで肝が高ぶる——これらが重なって、もともとの体質傾向以上に抜け毛が顕在化します。
授乳中でも比較的安全に使われる代表処方は、当帰芍薬散・四物湯・十全大補湯・補中益気湯など気血を補う処方群です。ただし添付文書では妊婦・授乳婦への投与は「治療上の有益性が危険性を上回る場合」とされており、自己判断での開始は避け、産婦人科の主治医とも相談したうえで処方を見立てます。
そして何より、産後の時期は漢方より先に休息と食事の組み立てが土台です。睡眠不足が続いている方には、まずパートナーや家族との家事分担の相談を優先してお伝えしています。
今日から始められる養生法
髪を養う5つの食習慣
- 黒い食材を意識的に取る。黒胡麻・黒豆・黒きくらげ・黒米・海藻——漢方では「黒い食材は腎を補う」とされ、髪の土台を養う方向で働く
- 1日に良質なたんぱく質を体重1kgあたり1g以上。卵・豆腐・鶏むね・魚を毎食。髪の主成分はケラチン(たんぱく質)
- レバー・赤身肉・あさり・ひじきで鉄分。月経のある女性は週2〜3回意識して。鉄欠乏は隠れた抜け毛の主因
- 22時〜2時の睡眠を死守。この時間帯は肝が血を蔵する時間。寝不足は髪を直撃する
- 過度なダイエットを今すぐやめる。極端な糖質制限・断食は血と腎を消耗。「カロリーより栄養密度」で組み立てる
ツボケアで頭皮の血流を整える
当薬局でもおすすめしている、髪に使いやすいツボを4つご紹介します。シャンプー前や入浴中に、指の腹で気持ち良い強さで3〜5秒ずつ、じんわり押しましょう。
- 百会(ひゃくえ):頭頂部の中央、両耳の上端を結んだ線と正中線の交点。頭皮の血流改善・自律神経調整・気を上げる代表ツボ
- 四神聡(ししんそう):百会の前後左右、それぞれ指1本分のところにある4つのツボ。百会と組み合わせて頭頂部の血流を高める
- 風池(ふうち):後頭部、髪の生え際で耳の後ろの大きなくぼみ。首・後頭部の血流改善、頭皮への栄養供給を促す
- 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上端から指4本分上、すねの内側の骨の後ろ。婦人科系の万能ツボで、血を補い月経を整える方向で働く
※妊娠中の方は三陰交の強い刺激は避けてください(陣痛を促すツボとされます)。
抜け毛の裏にある本当の体質
「抜け毛で来たけれど、最近月経が乱れていて」「妊活もそろそろ考えていて」——抜け毛のご相談で当薬局にいらっしゃる30〜40代の女性の多くが、実は妊活や更年期の入り口に立っていることに気づかれます。
漢方の視点では、抜け毛・薄毛の中核病態である血虚と腎虚は、妊活の土台が崩れている状態そのものであり、更年期の不調を準備している体質傾向そのものでもあります。「気血両虚は妊活の土台が崩れている状態」「腎虚は更年期のホットフラッシュや骨粗鬆症のリスクと地続き」——同じ根っこから、人によっては抜け毛、人によっては不妊、人によっては更年期症状として表に出てくるのです。
「抜け毛だけ取りたい」とお越しになった方が、見立てを進めるうちに「気がついたら月経が整い、妊活の準備にもなっていた」「気がついたら更年期の波がずっと穏やかになった」となるのは、当薬局では珍しくありません。髪を養う血と腎を整えることは、女性の人生全体のターニングポイントを支えることと地続きです(個人差があります)。
代表処方は当帰芍薬散・十全大補湯・八味地黄丸・加味逍遙散などで、抜け毛・妊活・更年期の処方はほぼ重なります。つまり、抜け毛を整えることは、人生の次のステージの土台を整えることと同じ仕事をしているのです。
当薬局のアプローチ
当薬局でお渡しするのは、煎じ薬だけではありません。
まずは初回60分のカウンセリングで、あなたの体調・抜け毛の出方・睡眠・食事・月経の状態・産後/授乳の有無・現在の市販薬や処方薬・皮膚科や婦人科での検査結果までをじっくりうかがいます。お話の中から体質の軸を見立て、200種類を超える古典処方の中からあなたに合うものを選び、厳選した生薬を土鍋で丁寧に煎じてお渡しする——これが銀座漢方天風堂が長年磨いてきた強みです。
そのうえで、漢方だけに頼らず、髪を養う食事・睡眠の整え方・西洋薬との役割分担・日常で押せるツボまで、体質に合わせてお伝えします。「育毛剤をやめてください」とは言いません。主治医の処方を尊重しつつ、内側から髪の土台を底上げする方向のご提案がほとんどです。
症状が軽い場合や煎じる時間が取れない方には、手軽なエキス剤(粉薬・錠剤・顆粒)も状況に応じて併用します。
煎じ薬とエキス剤、向き・不向き
| 比較項目 | エキス剤(粉薬・錠剤・顆粒) | 煎じ薬 |
|---|---|---|
| 処方の選択肢 | ラインナップの中から | 200種類超の古典処方から見立てる |
| 複合体質への対応 | 単一症状向き | 血虚+肝鬱気滞+腎虚などの複合に対応 |
| 相談・見立て | 基本なし | 薬剤師が初回60分対面で |
| 西洋薬・育毛剤との併用相談 | 限定的 | 現在の処方を踏まえた見立てが可能 |
| 向く方 | 単発の症状・軽症 | 長期的に整える・複数体質が絡む慢性の不調 |
まとめ
春の抜け毛は、人間にも残る換毛期の名残・春の肝の高ぶり・花粉と寒暖差が一気に重なる、現代の働く女性特有の季節性の不調です。漢方では約2000年前から「髪は血の余り」「腎の華は髪に在り」と捉え、髪は全身の血と腎の状態を映す鏡として位置づけてきました。
同じ「抜け毛」でも、髪が細く色が薄いタイプ、ストレスで部分的に抜けるタイプ、加齢と白髪を伴うタイプ、過労と思い悩みで抜けるタイプ——4体質のどれが重なっているかで、選ぶ処方が変わります。
分け目が広くなった方、シャンプーの抜け毛が以前の1.5倍以上に増えた方、産後の抜け毛が12か月過ぎても回復しない方、白髪と抜け毛が同時に進行している方は、4体質のどれが重なっているかを丁寧に見立てる時期にきています。
当薬局では、薬剤師歴45年以上の柳澤が初回60分じっくりお話をうかがい、現在の市販薬や処方薬も踏まえて、あなたに合う煎じ薬を見立ててご提案します(個人差があります)。
よくあるご質問
Q. 春になると抜け毛が増えるのはなぜですか?
春の抜け毛が増える背景には、生理学・環境・東洋医学の3つの理由が重なります。生理学的には、人間にもわずかに残る「換毛期」の名残で春と秋にヘアサイクルの休止期へ入る毛包が一時的に増えます。環境的には、新年度の人間関係・歓送迎会・花粉症・寒暖差による自律神経の乱れが頭皮の血流を悪化させます。漢方の視点では、春に高ぶる肝が血を消耗し、髪を養う「血」が不足する体質傾向が出ます。一過性であることが多いですが、3か月以上続く場合は体質からの見立てが必要な時期にきています。
Q. ミノキシジル外用やAGA治療と漢方は併用できますか?
多くの場合、併用可能です。ミノキシジル外用は男女ともに厚生労働省認可の発毛成分で、漢方薬との明確な相互作用報告はありません。皮膚科でAGA治療を受けている方が、体質の土台を整える目的で漢方を併用する例は当薬局でも多くあります。ただしフィナステリドの内服は女性型脱毛症には効果がなく、妊娠中・授乳中の女性には禁忌です。現在使用中の外用薬・内服薬・サプリメント・処方薬をすべてご相談時にお伝えください。漢方の役割は「西洋薬を置き換える」のではなく、髪を養う土台を底上げする支えです(個人差があります)。
Q. 産後の抜け毛がひどく、授乳中ですが漢方は飲めますか?
産後脱毛は出産後2〜6か月にピークを迎え、6〜12か月で自然に回復することが多い生理現象です。授乳中の漢方は、当帰芍薬散・四物湯・十全大補湯・補中益気湯など気血を補う処方が比較的安全に使われています。ただし添付文書では妊婦・授乳婦への投与は「治療上の有益性が危険性を上回る場合」とされており、自己判断での開始は避けてください。当薬局では授乳中であることを必ずお伝えいただき、産婦人科の主治医とも相談したうえで処方を見立てます。睡眠不足・栄養不足が大きい時期なので、漢方より先に休息と食事の組み立てが土台です。
Q. 髪が抜けるだけでなく、白髪も増えてきました。同じ体質ですか?
はい、漢方の視点では同じ根っこから出ているサインのことが多くあります。古典の『黄帝内経』には「腎は精を蔵し、その華は髪に在り」と記され、髪のツヤ・色・抜けやすさはすべて腎の精と血の状態を映す鏡として捉えられています。抜け毛と白髪が同時に増えている場合は、加齢・過労・睡眠不足で腎精と血が同時に消耗している「肝腎両虚」の体質傾向が考えられます。代表処方は六味地黄丸・八味地黄丸・七宝美髯丹・首烏延寿丹などで、腎を補い髪の土台を整える方向で見立てます(個人差があります)。
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免責事項
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。記載の漢方薬は体質により適応が異なり、効果には個人差があります。局所的に円形に抜けた・地肌に強い赤みや痒みがある・全身の脱毛・3か月以上明らかな抜け毛増加が続く方は、まず皮膚科・婦人科をご受診ください。甲状腺機能低下症・鉄欠乏性貧血・自己免疫疾患による脱毛は血液検査で原因が見つかります。フィナステリドの内服は女性型脱毛症には効果がなく、妊娠中・授乳中の女性には禁忌です。現在皮膚科・婦人科・心療内科・内科で治療中の方、ミノキシジル外用・育毛剤・サプリメント・利尿薬・降圧薬・ステロイド剤・抗うつ薬を併用中の方、妊娠中・授乳中の方は、ご相談時に必ずお伝えください。複数の漢方薬を併用すると、共通の生薬「甘草」が重複し、ごく稀に偽アルドステロン症(低カリウム血症)などの副作用が報告されています。一般的に1日の甘草量が2.5gを超えると注意が必要とされます。妊娠中の方は三陰交の強い刺激は陣痛を促す可能性があり推奨されません。
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