春の肌荒れに漢方で体質改善|花粉・ストレス・更年期が重なる原因と体質別ケアを薬剤師が解説

春の肌荒れに漢方で体質改善|花粉・ストレス・更年期が重なる原因と体質別ケアを薬剤師が解説

春の肌荒れに漢方で体質改善|花粉・ストレス・更年期が重なる原因と体質別ケアを薬剤師が解説

春の肌荒れ - 春の肌荒れに悩む40代女性のライフスタイル

「毎年春になると決まって肌が荒れる」「スキンケアを変えても治らない」「花粉症の薬は飲んでいるのに顔のかゆみが止まらない」――3月から4月にかけて、こうしたご相談が一気に増えます。

皮膚科で塗り薬をもらっても、春が過ぎればまた落ち着いて、翌年また繰り返す。そんな「毎年恒例」の肌荒れに悩む方は少なくありません。

漢方の視点で見ると、春の肌荒れは肌だけの問題ではありません。花粉(外的刺激)・ストレス(気の滞り)・ホルモンバランス(血の不足)という3つの要因が体の内側で複合的に絡み合っています。表面の症状を抑えるだけでは、根本に届かないのです。

ドラッグストアで選ぶ漢方薬は、言わば「既製服」。サイズが合えばよいのですが、体質に合わなければ意味がありません。煎じ薬によるオーダーメイドの漢方なら、あなたの肌荒れの「本当の原因」に合わせて生薬の配合を細かく調整できます。

この記事では、春に肌荒れが悪化する漢方的なメカニズムと、体質別のおすすめ漢方薬・養生法をお伝えします。

この記事の監修

柳澤 謙行(やなざわ けんこう)/銀座漢方天風堂薬局 薬剤師
薬剤師歴45年、漢方相談実績1万人以上。鍼灸師・臨床検査技師・ケアマネジャー資格保有。煎じ薬による体質改善を専門とする。


春の肌荒れのメカニズム静物

春に肌荒れが悪化する3つの原因|季節の変わり目に起きていること

ご相談に来られる方の多くが「肌が弱いから仕方ない」と諦めています。しかし漢方の立場から見ると、春の肌荒れには明確な原因パターンがあります。しかも、1つではなく複数の原因が同時に作用しているのが厄介なところです。

原因1:花粉・黄砂による「風邪(ふうじゃ)」の侵入

漢方には「六淫(ろくいん)」という外的な病因の概念があります。その中で春に最も強まるのが「風邪(ふうじゃ)」です。風邪は上半身、特に顔や頭部に症状が出やすい性質を持っています。

現代医学的に言えば、花粉・黄砂・PM2.5がこの風邪に相当します。冬の乾燥でバリア機能が低下した肌に、これらが侵入して「花粉皮膚炎」を起こす。鼻水やくしゃみだけでなく、顔の赤み・かゆみ・湿疹として皮膚に症状が現れるのです。

風邪は「遊走性」という特徴があり、症状が日によって場所を変えたり、急に出たり引いたりします。「昨日は額だったのに今日は頬が痒い」という訴えは、まさに風邪の特徴です。

原因2:ストレスと自律神経の乱れ ―「肝気の亢進」

漢方の五行説では、春は「肝」の季節です。肝は気の巡りを全身に配る働き(疏泄機能)を担っています。現代医学でいう自律神経の調節に近い役割です。

春は陽気が上昇する季節。この自然の変化に体が追いつかず、肝気が上がりすぎる(肝気の亢進)ことがあります。新年度の環境変化やお子さんの進級・進学のストレスも加わり、気の巡りが乱れやすくなります。

肝気が滞ると、のぼせ・イライラ・不眠が生じ、体内に「熱」がこもります。この熱が皮膚に上るとニキビ・吹き出物・赤みとして表面化するのです。特に顎周り・フェイスラインに出やすいのは、肝気鬱結の典型的なサインです。

原因3:ホルモンバランスの変動 ―「血虚」と「瘀血」

30代後半からエストロゲンの分泌量は徐々に低下し、40〜50代の更年期では急激に変動します。漢方ではこれを「血虚(けっきょ)」と捉えます。血が不足すると、皮膚に十分な栄養が届かず、乾燥・くすみ・ターンオーバーの低下が起きます。

さらに、血の巡りが悪くなる「瘀血(おけつ)」も重なると、肌の新陳代謝が滞り、シミ・くすみ・ニキビ痕の色素沈着が残りやすくなります。生理前に肌荒れが悪化する方は、この瘀血が関与していることが多いです。

当薬局の春の肌荒れ相談では、この3つが全て重なっている方が6割以上です。花粉で肌が荒れ、ストレスでニキビができ、ホルモンの変動で治りにくくなる。この「三重苦」を1つの塗り薬で解決するのは難しい。だからこそ、体の内側から複数の原因に同時にアプローチする漢方が注目されています。

春の肌荒れ「三重苦」のメカニズム

外からの攻撃

花粉・黄砂
(風邪)

気の乱れ

ストレス・自律神経
(肝気鬱結)

血の不足・滞り

ホルモン変動
(血虚・瘀血)

3つが複合 → 繰り返す春の肌荒れ

塗り薬だけでは根本に届かない理由


肌荒れに漢方が選ばれる理由|「標治」と「本治」の二段構え

漢方には「標治(ひょうち)」と「本治(ほんち)」という2つのアプローチがあります。西洋医学の対症療法が標治に相当するなら、漢方の真骨頂は本治 ― 体質そのものを整えて、肌荒れが起きにくい体を作ることにあります。

標治(急性期の対応) 本治(体質改善)
目的 今ある炎症・かゆみを抑える 肌荒れが起きにくい体質に整える
処方例 十味敗毒湯・清上防風湯 当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸加薏苡仁
期間 2〜4週間 1〜3ヶ月
ポイント 症状が強い時期に集中的に使用 春が来る前から始めると効果的

当薬局では、まず標治で今の辛い症状を和らげながら、並行して本治の処方を組み立てていきます。症状の変化を見ながら処方内容を微調整できるのが、煎じ薬によるオーダーメイド漢方の強みです。


春の肌荒れの体質タイプ別漢方生薬

体質別|春の肌荒れにおすすめの漢方薬とセルフチェック

同じ「春の肌荒れ」でも、原因となる体質は異なります。以下のセルフチェックで、ご自身がどのタイプに近いか確認してみてください。

タイプA:乾燥・かゆみ型(血虚タイプ)

  • 肌がカサカサして粉をふく
  • かゆみが出るが、掻いても赤くなるだけで湿疹は少ない
  • 爪が割れやすい、髪がパサつく
  • 顔色が白っぽい、またはくすんでいる
  • 立ちくらみ、めまいがある
  • 生理の量が少ない、周期が長い

当薬局の春の肌荒れ相談で最も多い約40%がこのタイプ。30〜50代の女性に特に多く見られます。血が不足して皮膚に栄養が届かない状態です。更年期世代ではホルモンの低下と重なり、症状が強まる傾向があります。

おすすめ漢方薬
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血を補い、水の巡りも整える処方。冷え性で華奢な方に適する傾向があります。肌の乾燥と同時にむくみがある方にも使われます。
当帰飲子(とうきいんし):乾燥肌のかゆみが強い方に。血を補いながら肌を潤す方向で働きかけます。特に高齢者や秋冬の乾燥肌にも用いられる処方です。
温清飲(うんせいいん):乾燥と炎症が混在する方(乾燥しているのに赤い)に。血虚と血熱の両方に対応する処方です。

タイプB:赤み・炎症・ニキビ型(湿熱・血熱タイプ)

  • 赤く隆起したニキビ、化膿することがある
  • 顔が赤い、ほてる
  • 皮脂が多い、テカリが気になる
  • 便秘がち、または軟便で臭いが強い
  • 脂っこいもの・辛いもの・お酒が好き
  • 舌の苔が黄色っぽい

約25%がこのタイプ。体内に余分な熱と湿がこもり、それが皮膚から吹き出している状態。春は新陳代謝が活発になり皮脂分泌が増えるため、冬は落ち着いていた方でも再燃しやすくなります。

おすすめ漢方薬
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):顔面の赤いニキビ・吹き出物に用いられる代表処方。体力が比較的ある方向け。顔の熱を清め、炎症を鎮める方向で働きかけます。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):慢性的に繰り返すニキビに。副鼻腔炎やアレルギー体質を伴う方にも適する傾向があり、花粉症と肌荒れが同時に出る方に使われることがあります。
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):初期の軽い炎症・小さな赤いブツブツに。比較的短期間で変化が出やすく、標治の第一選択として使われることが多い処方です。

タイプC:ストレス・イライラ連動型(肝気鬱結タイプ)

  • 生理前に肌荒れが悪化する
  • イライラ・情緒不安定を感じる
  • 肩こり・頭痛がひどい
  • 胸やわき腹が張る感じがある
  • 寝つきが悪い、夢が多い
  • 顎周り・フェイスラインにニキビが出る

約20%がこのタイプ。ストレスで肝の疏泄機能が乱れ、気の巡りが滞っている状態。春は肝気が亢進しやすい季節のため、普段はPMS程度で済んでいた方でも症状が強く出ることがあります。

おすすめ漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん):ストレス・更年期の肌荒れに最も使われる処方の一つ。肝気の滞りを流し、血を補い、上半身の熱を冷ます方向で三方から整えます。イライラ・不眠を伴う肌荒れに適する傾向があります。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):ストレスが強く、動悸・不安・不眠を伴う方に。精神的な緊張を和らげ、気の巡りを整える方向で働きかけます。

タイプD:くすみ・色素沈着・生理前悪化型(瘀血タイプ)

  • ニキビ痕・シミが残りやすい
  • 肌のくすみが気になる
  • 目の下にクマができやすい
  • 生理痛がひどい、経血にレバー状の塊がある
  • 冷えのぼせがある(上半身は暑いのに足は冷たい)
  • 肩こりが慢性的にある

約15%がこのタイプ。血の巡りが悪く、古い血(瘀血)が滞っている状態。肌のターンオーバーが遅くなり、ニキビ痕が消えにくい・シミが増えるという悩みにつながります。40代以降の更年期世代に多い傾向です。

おすすめ漢方薬
桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん):瘀血タイプの肌荒れの代表処方。血行を促進し、肌の状態を整える方向で働きかけます。ニキビ痕・シミに用いられることが多い処方です。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう):便秘を伴う瘀血タイプに。お通じを整えながら血の巡りを改善する方向で二面から整えます。

複数のタイプが重なっている方へ
タイプA(乾燥)とC(ストレス)、タイプC(ストレス)とD(瘀血)は特に重なりやすい組み合わせです。「乾燥するのにニキビもできる」「生理前はイライラも肌荒れもひどい」という方は、複数の体質が絡んでいる可能性があります。この場合、既製品の漢方薬1種類では対応しきれないことがあり、煎じ薬でのオーダーメイド処方が適していることがあります。



漢方薬局での相談がドラッグストアと違う理由

「ドラッグストアで十味敗毒湯を買って飲んだけど変わらなかった」というご相談は珍しくありません。漢方薬が効かないのではなく、体質とのミスマッチが起きているケースがほとんどです。

ドラッグストア(エキス剤) 漢方専門薬局(煎じ薬)
選び方 症状名で選ぶ(「肌荒れ」で1〜2種類) 体質・原因を見極めてから処方を決定
処方の柔軟性 既成の配合(既製服) 生薬の種類・量を個別調整(オーダーメイド)
フォローアップ 自己判断で継続・中止 定期的に経過を確認し処方を調整
複合体質への対応 1〜2処方を併用(組み合わせが限られる) 複数の体質に同時対応する処方設計が可能

エキス剤が悪いわけではありません。体質にぴったり合えば十分に変化を感じることもあります。ただ、春の肌荒れのように複数の原因が複合的に絡む場合は、生薬の配合をきめ細かく調整できる煎じ薬が優位性を持つのです。


春の肌荒れの養生・セルフケア

今日からできる春の肌荒れ養生法|食事・生活習慣・ツボ

漢方薬と併せて、日々の養生で体の内側から肌を整えましょう。春の養生のキーワードは「肝を整え、血を補い、風邪を防ぐ」です。

食養生:肌を内側から潤す春の食材

目的 おすすめ食材 期待される働き
血を補う ほうれん草、小松菜、なつめ、黒ごま、レバー 肌に栄養を届け、乾燥しがちな肌をサポートする
肝を整える セロリ、春菊、菜の花、柑橘類、酢の物 気の巡りを助け、ストレスによる肌荒れを予防
熱を清める たけのこ、ふきのとう、うど、ごぼう 体内のこもった熱を発散し、ニキビの勢いを抑える
胃腸を養う 山芋、キャベツ、かぼちゃ、はと麦 消化吸収を高め、栄養が肌まで届く土台を作る

はと麦(ヨクイニン)のすすめ
はと麦は生薬名「薏苡仁(ヨクイニン)」として漢方にも使われる食材です。肌のキメを整え、余分な水分を排出する方向で働きます。はと麦茶として毎日の水分補給に取り入れるのが手軽でおすすめです。

生活養生:4つの習慣

  1. 朝の散歩で陽気を取り込む:春は「発散」の季節。朝日を浴びながら15分程度歩くと、肝気の巡りが整い自律神経のバランスが安定しやすくなります
  2. ぬるめの半身浴で血行を促進:38〜40℃のお湯に15分。熱いお風呂は肌の潤いを奪うため逆効果です。入浴後は5分以内に保湿しましょう
  3. 23時までに就寝する:漢方では23時〜1時は「肝の時間」。この時間に眠ることで肝血が養われ、肌の修復が進むとされています
  4. 花粉対策を徹底する:帰宅後の洗顔・衣類の花粉払い・花粉バリアクリームの活用。外からの風邪を防ぐことが、肌荒れ養生の第一歩です

おすすめのツボ:合谷・血海・三陰交

  • 合谷(ごうこく):手の甲、親指と人差し指の付け根の間。顔の血行促進・肌荒れ全般に使われるツボ。花粉症の鼻詰まりにも
  • 血海(けっかい):膝のお皿の内側上縁から指3本分上。血の巡りを整え、肌の栄養補給を助ける方向で働きます
  • 三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指4本分上。肝・脾・腎の3つの経絡が交わるツボで、女性の体調全般を整える要穴です

各ツボを1回3〜5秒、「痛気持ちいい」程度の強さで5回ずつ押しましょう。入浴中やテレビを見ながらの習慣にすると続けやすいです。

控えたい食事・習慣
脂っこいもの・辛いもの・過度の飲酒は体内に「湿熱」を生み、ニキビ・吹き出物を悪化させることがあります。また、夜更かし・過度なダイエット(食事制限)は血虚を悪化させ、乾燥肌を加速させる要因です。


よくあるご質問

Q. 漢方薬と皮膚科の塗り薬は併用できますか?
A. 基本的に併用できます。漢方薬は体の内側から体質を整え、塗り薬は外側から症状を抑えるため、アプローチが異なります。現在服用中のお薬がある場合は、ご相談時にお知らせください。
Q. 市販の漢方薬と煎じ薬は何が違いますか?
A. 市販のエキス剤は工場で規格化された配合です。煎じ薬は薬剤師が一人ひとりの体質に合わせて生薬の種類・量を調整します。複数の原因が絡む肌荒れほど、この「微調整」が重要になります。
Q. 花粉症の薬を飲んでいますが、漢方も飲めますか?
A. 多くの場合、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬と漢方薬の併用は問題ないとされています。ただし、組み合わせによっては注意が必要な場合もありますので、必ず事前にご相談ください。
Q. 肌荒れ予防のために春前から漢方を飲み始めることはできますか?
A. むしろおすすめです。「本治」は体質改善が目的のため、症状が出る前から始めるとより効果的に働きやすくなります。毎年春に肌が荒れる方は、2月頃からのスタートが理想的です。
Q. 40代になってから急に春の肌荒れがひどくなりました。更年期と関係ありますか?
A. 関係がある可能性が高いです。40代前後からエストロゲンの分泌が低下し、肌のバリア機能や水分保持力が落ちます。漢方ではこれを「血虚」と捉え、血を補いながら肝のバランスを整える方向で対応します。更年期の肌荒れに悩む方のご相談は増えています。

春の肌荒れの体質背景・銀座漢方天風堂

まとめ|繰り返す春の肌荒れを根本から整える

春の肌荒れは、花粉・ストレス・ホルモンバランスの「三重苦」が体の内側で絡み合って起きています。肌の表面だけをケアしても、毎年同じことの繰り返しです。

漢方は、この複合的な原因に対して体の内側から同時にアプローチする手段です。体質に合った処方を選べば、「肌荒れが起きにくい体」を目指すことができます。

  • 乾燥・かゆみが中心 → 血を補う方向(当帰芍薬散・当帰飲子)
  • 赤み・ニキビが中心 → 熱を清める方向(清上防風湯・十味敗毒湯)
  • ストレス・イライラと連動 → 肝気を整える方向(加味逍遙散)
  • くすみ・色素沈着が残る → 血行を促す方向(桂枝茯苓丸加薏苡仁)

「自分がどのタイプかわからない」「複数当てはまる」という方こそ、漢方専門の薬剤師にご相談ください。体質の見立てから、あなただけの一剤を仕立てます。

免責事項
この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。漢方薬の効果には個人差があり、すべての方に同様の変化が現れるわけではありません。症状がひどい場合や長引く場合は、医師の診察を受けてください。漢方薬の服用を希望される方は、漢方専門の薬剤師または医師にご相談ください。妊娠中・授乳中の方は、漢方薬の服用前に必ず薬剤師または医師にご相談ください。記事内の情報は2026年4月時点のものです。

※本記事は東洋医学の考え方を情報として提供するものであり、特定の効果・効能を保証するものではありません。漢方薬の服用にあたっては、必ず専門の薬剤師にご相談ください。体調に不安のある方は医療機関への受診をお勧めします。個人差があります。

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