柳澤 謙行(やなざわ けんこう)
銀座漢方天風堂薬局 薬剤師
漢方専門薬剤師として10年以上、体質別の漢方相談に携わる。特に女性の体調管理・季節の養生を得意とし、「体の声を聞く漢方」をモットーに日々のカウンセリングを行っている。
春の頭痛・肩こりと漢方|気の上逆・血の滞りを体質別に整える方法
この記事でわかること
- 春に頭痛・肩こりが悪化する東洋医学的な理由
- 「肝気上逆型」「瘀血型」「気血不足型」3つの体質タイプと見分け方
- 体質に応じた漢方薬(釣藤散・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散ほか)の使い分け
- 春の頭痛・肩こりを和らげる食養生と生活習慣
春になると、なぜか頭が重くなる。首から肩にかけてのこわばりが抜けない。毎年この時期だけ鎮痛剤が手放せない—そんな方は、当薬局にも多くいらっしゃいます。
西洋医学では「緊張型頭痛」「偏頭痛」と診断されることが多いですが、東洋医学では季節の変化と体質の関係から春の頭痛・肩こりを読み解きます。同じ「春の頭痛」でも、原因となる体質は人によって異なります。体質を整えることで、ただ痛みを抑えるのではなく、繰り返しにくい体をつくる方向で考えるのが漢方のアプローチです。
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営業時間 13:00〜19:00 / 土日祝定休
春はなぜ頭痛・肩こりが起きやすいのか
東洋医学では、春は「肝(かん)」の季節とされます。肝は気の流れを調節し、血を蓄え、精神的なストレスの影響を受けやすい臓腑です。春の気候は上昇・発散のエネルギーが強まる季節。この力が体内でもはたらき、気が上方向へ流れやすくなります。
この「気の上昇」が適切であれば問題ありません。しかし冬の間に蓄積した疲れや血の不足がある状態で春を迎えると、気だけが上がりすぎて頭部に滞り、頭痛や肩こりとして現れることがあります。
春の頭痛を起こしやすい3つの背景
- 寒暖差:気温の急変が自律神経を乱し、血管の収縮・拡張が繰り返される
- 肝気の上逆:春特有の上昇エネルギーが過剰になり、気が頭部に集中する
- 冬の血不足:寒い季節に体が縮こまり、血の巡りが滞ったまま春を迎える
春(3〜5月)に多い体調不調の訴え(当薬局相談者 参考データ)
※当薬局での問診データをもとにした参考値です。個人差があります。
3つの体質タイプと特徴
当薬局でご相談に来られる方の春の頭痛・肩こりを整理すると、大きく3つの体質パターンに分かれることが多いです。ご自身がどのタイプかを知ることが、体質に合った漢方選びの第一歩になります。
肝気上逆型(かんきじょうぎゃくがた)
主な症状:頭の上部や側頭部が張るような痛み、目の充血・疲れ、顔が赤くなりやすい、怒りっぽい・イライラする、のぼせやすい。
タイミング:ストレスがかかったとき・疲れたときに悪化。夕方になると頭が重くなる傾向。
舌の特徴:舌が紅く、苔が薄黄色のことが多い。
瘀血型(おけつがた)
主な症状:場所が決まっているズキズキした頭痛、肩から首にかけての固いこわばり、顔色がくすみやすい、月経時に頭痛が悪化する、冷えると症状が強まる。
タイミング:月経前後や冷えた日に悪化しやすい。慢性的に続くことが多い。
舌の特徴:舌の色が暗め、舌の裏の静脈が太く見えることがある。
気血不足型(きけつふそくがた)
主な症状:頭全体がぼんやり重い・鈍い痛み、疲れると悪化する、顔色が白っぽい・血の気が少ない印象、立ちくらみ・めまいを伴うことがある、体が全体的にだるい。
タイミング:疲れが溜まったとき・生理後・産後などに悪化しやすい。
舌の特徴:舌が淡く、やや小さく見える。苔は薄い。
体質セルフチェック
当てはまる項目にチェックをして、最もチェックが多いタイプがあなたの傾向です。(個人差があります。正確な体質判断は専門家にご相談ください。)
春の頭痛・肩こり 体質チェックリスト
タイプ1:肝気上逆タイプ
タイプ2:瘀血タイプ
タイプ3:気血不足タイプ
タイプ別 漢方薬の使い分け
漢方では、症状の名前ではなく体質と原因に合わせて処方が変わります。同じ「頭痛」でも、肝気上逆タイプには気を降ろして熱を冷ます方向の漢方薬、瘀血タイプには血の巡りを整える方向の漢方薬、気血不足タイプには気と血を補う方向の漢方薬が選ばれることが多いです。
| 体質タイプ | 主な漢方薬の例 | アプローチの方向 | 特に向く方 |
|---|---|---|---|
| 肝気上逆型 | 釣藤散、黄連解毒湯、柴胡加竜骨牡蛎湯 | 清熱・気を降ろす・鎮静 | のぼせ・イライラ・目の充血がある方 |
| 瘀血型 | 桂枝茯苓丸、冠元顆粒、血府逐瘀丸 | 血の巡りを整える・滞りを解消 | 月経と連動して悪化する方・慢性的な肩こり |
| 気血不足型 | 当帰芍薬散、十全大補湯、帰脾湯 | 気と血を補う・頭部へ血を届ける | 疲れやすい・立ちくらみ・生理後に悪化 |
| 複合タイプ | 加味逍遙散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯 | 複数の原因に同時アプローチ | 冷えとのぼせが混在・ストレスと血不足の両方 |
当薬局での相談の傾向
春の頭痛・肩こりでご相談に来られる方は、「肝気上逆+気血不足」の複合タイプが最も多い印象です。冬の疲れが抜けきらないまま春のエネルギーを受けてしまう方に多く見られます。どのタイプかわからない場合も、問診・舌診・腹診を組み合わせて体質を判断しますので、ご安心ください。
各タイプの漢方薬を詳しく解説
釣藤散(ちょうとうさん)
釣藤散は、のぼせやイライラを伴う頭痛・高血圧傾向の方に用いられることがある漢方薬です。釣藤鈎(ちょうとうこう)という植物の棘の部分が主薬で、肝の気の上昇を抑え、熱を冷ます方向で体質を整えます。朝起きたときに頭が重い、後頭部から肩のこわばりがある、という訴えに対して用いられることがあります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は、血の巡りが滞る「瘀血」の状態にアプローチする方向の、代表的な漢方薬のひとつです。月経に関連した頭痛・肩こりや、同じ部位に固定したような痛みが続くタイプに用いられることがあります。冷えとのぼせが混在する方にも向いているとされ、比較的体力がある方に使われることが多いです。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は、「血を補い、水の巡りを整える」方向の漢方薬です。血虚(けっきょ)と水毒(すいどく)が合わさったタイプ、つまり血が不足してふわっとした頭痛・立ちくらみ・むくみを伴う方に向いているとされます。体力がやや低下している方や、生理後に症状が悪化する方のご相談でよく使われる薬のひとつです。
市販薬と処方薬の違い
漢方薬の中には市販で購入できるものもありますが、体質に合っていない漢方薬は効果が出にくいだけでなく、場合によっては体に合わないこともあります。特に複数の症状が重なっている場合は、専門家の問診を経て選んでいただくことをおすすめしています。
漢方相談の流れ
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春の頭痛・肩こりに効果的な食養生
漢方薬と並行して、日々の食事で体質を整えることも大切です。春は肝を養い、気の巡りを助ける食材を意識して取り入れましょう。
肝気上逆タイプ|熱を冷ます・気を落ち着かせる食材
セロリ・春菊・クレソン・菊花茶・はと麦茶などが向いています。辛味の強い食材や過度な飲酒は気の上昇を促してしまうため、春の間はできる限り控える方向で整えます。
瘀血タイプ|血の巡りを助ける食材
黒豆・にんじん・玉ねぎ・らっきょう・サーモン・青魚などが参考になります。血が固まりやすい状態を改善する方向の食材として、東洋医学では活血(かっけつ)食材と呼ばれています。冷たいもの・生もの(刺身等)は体を冷やして血の巡りを滞らせやすいため、量に気をつけることが多いです。
気血不足タイプ|気と血を補う食材
ほうれん草・小松菜・レバー・ひじき・黒ごま・なつめ(棗)・米・もち米などが向いています。消化に負担のかかる食事(脂っこいもの・冷たいもの・硬いもの)は控えめにして、温かく消化しやすい食事を基本とすることをおすすめしています。
春の養生ワンポイント
春は「肝」に負担をかけないことが大切です。過労・深夜まで起きていること・飲酒の多い日々・強いストレスは肝気を乱し、頭痛・肩こりを悪化させやすくなります。22〜23時には就寝し、肝が回復する時間帯(23時〜3時)に十分な睡眠をとることが春の養生の基本です。
よくあるご質問
春だけ頭痛がひどくなるのはなぜですか?
東洋医学では春は「肝」の季節とされ、気の上昇が活発になります。この上昇エネルギーが過剰になると、頭部に気が滞りやすくなり、頭痛や肩こりとして現れることがあります。また寒暖差による自律神経の乱れや、花粉症などで体に負担がかかることも要因のひとつです。
釣藤散はどんな頭痛に向いていますか?
釣藤散は、のぼせやイライラを伴う高血圧傾向の頭痛、特に朝起きたときに頭が重い・後頭部から肩にかけてのこわばりがあるタイプに用いられることがあります。肝の気が上逆しているタイプに向いており、清熱・鎮静の方向で体質を整えます。ただし体質によって合う漢方薬は異なりますので、専門家にご相談ください。
肩こりと頭痛が同時に出るのは漢方で対応できますか?
はい、漢方では肩こりと頭痛をセットで考えることが多く、根本の体質から整えることでどちらにもアプローチできる場合があります。血の巡りが滞る「瘀血」のタイプであれば、桂枝茯苓丸などが肩こりと頭痛の両方に対して用いられることがあります。体全体の巡りを整える視点で考えるのが漢方らしいアプローチです。
鎮痛剤を使いながら漢方薬を飲んでも大丈夫ですか?
多くの場合、市販の鎮痛剤と漢方薬の併用は可能とされています。ただし、胃腸への負担が重なることや、成分によっては注意が必要な組み合わせもあります。現在服用中のお薬がある方は、初回ご相談時にお薬手帳をお持ちいただくようお願いしています。
何ヶ月くらいで変化が出ますか?
個人差がありますが、体質に合った漢方薬であれば2〜4週間で「頭が重い感じが軽くなった」「肩のこわばりが和らいだ」と感じる方もいらっしゃいます。春の季節的な頭痛であれば、季節が安定するとともに変化が出やすい傾向があります。慢性的な肩こり・頭痛は体質改善に2〜3ヶ月を目安にすることが多いです。
春の頭痛・肩こりを体質から整えたい方へ
銀座漢方天風堂薬局では、問診・舌診・腹診を組み合わせたていねいなカウンセリングをしています。お一人でも、お二人でもお気軽にどうぞ。
営業時間 13:00〜19:00 / 土日祝定休
免責事項
本記事は一般的な漢方・東洋医学の知識をもとにした情報提供を目的としており、特定の症状・疾患に対する診断・治療を行うものではありません。記載の漢方薬は体質によって向き不向きがあり、個人差があります。現在治療中の方、お薬を服用中の方、妊娠中・授乳中の方は、必ず医師・薬剤師にご相談のうえご使用ください。
