春の自律神経の乱れに漢方でアプローチ|体質別おすすめ漢方薬と養生法を薬剤師が解説

春の自律神経の乱れに漢方でアプローチ
体質別おすすめ漢方薬と養生法を薬剤師が解説

監修

柳澤 謙行(やなざわ けんこう)

銀座漢方天風堂薬局 薬剤師

漢方医学とエビデンスに基づく視点で、患者様一人ひとりの体質に合わせた漢方カウンセリングを行っています。春先の不調に関するご相談は毎年多くいただいています。

「毎年、春になるとなんとなく体がだるい」「理由もなくイライラする」「夜なかなか眠れない」

当薬局にご相談に来られる方の中でも、3月から5月にかけてこうしたお悩みは急増します。病院で検査をしても異常が見つからず、どこに相談していいかわからないまま過ごしている方も少なくありません。

東洋医学では、春は五臓の「肝(かん)」が活発になる季節です。肝は気の巡りを司る臓腑であり、この働きが乱れることで自律神経のバランスが崩れやすくなると考えます。

この記事では、春に自律神経が乱れるメカニズムを東洋医学の視点から解説し、体質タイプ別の漢方薬と日常の養生法をお伝えします。

この記事でわかること

・春に自律神経が乱れやすい3つの原因(東洋医学の視点)
・自律神経の乱れで現れる代表的な5つの症状
・あなたの体質がわかるセルフチェックリスト
・体質タイプ別に用いられる漢方薬の特徴
・今日から始められる春の養生法5選

なぜ春は自律神経が乱れやすいのか

自律神経は、体温調節・消化・睡眠・心拍など、私たちが意識しなくても動いている体の機能をコントロールしています。交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)がバランスよく切り替わることで、体は安定した状態を保てます。

春にこのバランスが崩れやすい原因は、大きく3つあります。

原因1:寒暖差と気圧変動

春は1日の気温差が10度以上になることも珍しくありません。体はこの寒暖差に対応しようとして交感神経を頻繁に働かせるため、神経が疲弊します。さらに低気圧と高気圧が交互に通過し、気圧の変動が内耳を刺激して自律神経のバランスを崩す要因になります。

原因2:環境変化によるストレス

年度替わりの時期は、職場の異動や引っ越し、お子さんの進学など生活環境が大きく変わります。こうした変化は本人が自覚する以上に心身への負担となり、交感神経の過剰な緊張を招きます。

原因3:東洋医学で見る「肝」の高ぶり

東洋医学では、春は五臓の「肝」と深い関わりがあると考えます。肝は「疏泄(そせつ)」という機能を担い、気の巡りをスムーズに保つ役割を持っています。

春になると自然界の陽気が上昇し、それに呼応して肝の気も活発になります。適度であれば問題ありませんが、ストレスや過労が重なると肝気が上がりすぎてしまい、のぼせ・頭痛・イライラ・不眠などの「上に突き上げるような症状」が現れます。

きっかけ 寒暖差・気圧変動
環境ストレス
東洋医学的変化 肝気の高ぶり
気の上逆
体への影響 自律神経の
バランス崩壊
症状 頭痛・不眠
イライラ・倦怠感

漢方の「肝」は西洋医学の「肝臓」とは違います

東洋医学の「肝」は、気の巡り・感情のコントロール・血の貯蔵など幅広い機能を指す概念です。血液検査で肝機能が正常でも、東洋医学的には「肝」に負担がかかっている状態はあり得ます。

春の自律神経の乱れで現れる5つの代表的な症状

ご相談に来られる方がよく訴える症状を5つにまとめました。複数の症状が同時に出る方も多いです。

春に多いご相談(当薬局の傾向)

だるさ・倦怠感
イライラ・不安
不眠・眠りの浅さ
頭痛・めまい
胃腸の不調

※当薬局へのご相談内容の傾向をもとにした参考イメージです

1. だるさ・倦怠感が抜けない

朝起きても体が重く、休んでも疲れが取れない。これは「気虚(ききょ)」や「気滞(きたい)」が関係していることが多いです。肝の気が滞ると全身のエネルギー循環が悪くなり、慢性的な疲労感として現れます。

2. イライラや不安が止まらない

些細なことで怒りっぽくなったり、漠然とした不安感に襲われたりする方がいます。肝気が上逆している状態で、気が頭のほうに集中してしまうことで起こりやすい症状です。

3. 眠れない・夜中に目が覚める

交感神経が優位な状態が続くと、夜になってもスイッチが切り替わりません。東洋医学では「心(しん)」と「肝」の協調がうまくいかないときに不眠が起こると捉えます。

4. 頭痛・めまい・耳鳴り

肝の気や血が上に突き上げる「肝陽上亢(かんようじょうこう)」の状態では、頭痛やめまいが出やすくなります。低気圧の通過時に悪化する方は、水分代謝の乱れ(痰飲)も絡んでいる可能性があります。

5. 胃もたれ・食欲不振・下痢

肝と「脾(ひ)」は密接な関係にあります。肝気が高ぶると脾を圧迫し(肝脾不和)、消化機能が低下します。ストレスで胃が痛くなる方は、このパターンに当てはまることが多いです。

春の不調、おひとりで悩んでいませんか?

当薬局では体質を丁寧にお伺いし、あなたに合った漢方をご提案します。
初回相談は約60分(相談料無料)。お二人でのご相談も歓迎です。
※漢方薬の費用は処方内容により異なります(月2〜5万円程度が目安)

営業時間 13:00〜19:00(土曜・日曜・祝日定休)

あなたはどのタイプ?体質セルフチェック

漢方では、同じ「自律神経の乱れ」でも体質によってアプローチが異なります。以下のチェックリストで、当てはまる項目が多いタイプがあなたの傾向です。

体質セルフチェックリスト

タイプA:肝気鬱結(かんきうっけつ)タイプ

タイプB:気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ

タイプC:痰湿内阻(たんしつないそ)タイプ

タイプD:肝腎陰虚(かんじんいんきょ)タイプ

複数のタイプに当てはまる方へ

実際には2つ以上のタイプが重なっている方がほとんどです。セルフチェックはあくまで目安ですので、正確な体質判断は漢方の専門家にご相談ください。舌や脈の状態も含めて総合的に判断することが大切です。

体質タイプ別|春の自律神経の乱れに用いられる漢方薬

ここでは、当薬局で春先のご相談にお出しすることの多い漢方薬をタイプ別にご紹介します。

体質タイプ 代表的な漢方薬 こんな方に用いることがあります
肝気鬱結 加味逍遙散
(かみしょうようさん)
イライラ・不安・のぼせが交互に出る方。肝の気を巡らせ、血を補う方向で整えます。特に女性のご相談で使用頻度が高い処方です。
肝気鬱結
(気の上逆が強い)
抑肝散加陳皮半夏
(よくかんさんかちんぴはんげ)
神経の高ぶりが強く、怒りっぽさや歯ぎしり・筋肉のこわばりを伴う方。肝風を鎮める方向で使用します。
気血両虚 加味帰脾湯
(かみきひとう)
疲れやすく、不安感や不眠が続く方。気と血を同時に補い、心と脾の働きを整える方向で用いる処方です。考えすぎて眠れない方にも用いることがあります。
痰湿内阻 半夏厚朴湯
(はんげこうぼくとう)
のどのつかえ感や胸のモヤモヤがある方。気の巡りを整え、余分な水分を除く方向で処方を組み立てます。ストレスで胃腸にくるタイプにも合いやすい処方です。
痰湿内阻
(めまいが強い)
苓桂朮甘湯
(りょうけいじゅつかんとう)
めまい・ふらつき・動悸が目立つ方。水の巡りを整え、気を下ろす方向で用います。天気の変わり目に悪化する方に使うことが多いです。
肝腎陰虚 六味地黄丸
(ろくみじおうがん)
のぼせ・ほてり・寝汗・耳鳴りなど「陰」の不足がベースにある方。腎と肝の陰を補い、虚熱を冷ます方向で整えます。

漢方薬は「症状」ではなく「体質」で選びます

同じ「不眠」でも、イライラして眠れない方と、考えすぎて眠れない方では、使う漢方が異なります。市販の漢方薬を試す前に、まずは専門家に体質を見てもらうことをおすすめします。個人差がありますので、自己判断での長期服用はお控えください。

今日から始められる|春の養生法5選

漢方薬だけでなく、日常生活の中でできることも多くあります。当薬局でお伝えしている養生法の中から、取り入れやすいものを5つご紹介します。

1. 朝の散歩で「肝」の気を巡らせる

春の養生で最も大切なのは、朝の過ごし方です。起きたらカーテンを開けて朝日を浴び、できれば15〜20分ほど歩きましょう。朝の新鮮な空気を吸い込むことで肝の気がスムーズに巡り始め、1日のリズムが整いやすくなります。

2. 酸味の食材で肝をいたわる

東洋医学では「酸味は肝に入る」とされています。春は酸味のある食材を積極的に取り入れましょう。

食材 おすすめの取り入れ方 東洋医学で考えられている働き
梅干し・梅酢 朝食に1粒、または白湯に梅酢を数滴 肝の気を収め、消化を助ける方向に
柑橘類 グレープフルーツ、みかん、レモン水 気の巡りを促し、気分をすっきりさせる方向に
セロリ・三つ葉 スープやおひたしに 肝の熱を冷まし、気を下ろす方向に
クコの実 お茶やスープに5〜10粒 肝と腎の陰を補う方向に

3. ぬるめの入浴で副交感神経を優位に

38〜40度のお湯に15分ほど浸かるのが理想的です。熱すぎるお湯は交感神経を刺激してしまうため逆効果になります。入浴は就寝の1〜2時間前がベストタイミング。体温が下がるタイミングで自然と眠気が訪れます。

4. 「肝」のツボを押す

セルフケアに使えるツボ

太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨が交わるくぼみ。肝の気を巡らせ、イライラを和らげる方向に働きます。

内関(ないかん):手首の内側、手首のシワから指3本分ひじ寄り。胸のつかえや吐き気を楽にする方向に。自律神経を整えるツボとしても知られています。

各ツボを3〜5秒かけてゆっくり押し、5回ほど繰り返します。痛気持ちいい程度の強さで行いましょう。

5. 夜のスマホを「深呼吸」に置き換える

就寝前のスマートフォンは交感神経を刺激します。代わりに、腹式呼吸を5分間行ってみてください。鼻から4秒吸い、口から8秒かけてゆっくり吐く。これだけで副交感神経が優位になり、入眠しやすくなることが多いです。

「自分に合った漢方」を一緒に見つけませんか?

体質は人それぞれ。舌や脈の状態、生活習慣を含めて総合的に判断し、
あなたに合った処方をご提案します。初回相談料は無料です。お二人でのご相談も歓迎です。
※漢方薬の費用は処方内容により異なります(月2〜5万円程度が目安)

営業時間 13:00〜19:00(土曜・日曜・祝日定休)

よくあるご質問

春に自律神経が乱れやすいのはなぜですか?
春は寒暖差や気圧の変動が大きく、さらに新生活によるストレスが加わります。東洋医学では春は「肝」の季節とされ、肝の気が高ぶりやすくなることで自律神経のバランスが崩れやすいと考えます。
自律神経の乱れに漢方薬は使えますか?
漢方医学では、自律神経の乱れを「気」の滞りや「血」の不足として捉え、体質に合わせた処方を組み立てます。加味逍遙散、抑肝散、半夏厚朴湯などが用いられることがあります。ただし、体質によって適切な処方は異なりますので、専門家にご相談ください。
漢方薬はどのくらいで変化を感じますか?
体質や症状により個人差がありますが、早い方で2週間ほど、一般的には1〜2ヶ月程度で変化を感じる方が多いです。春の不調であれば、季節が変わる前から飲み始めるのが理想的です。
心療内科の薬と漢方は併用できますか?
多くの場合、併用は可能です。ただし、服用中のお薬との相互作用を確認する必要がありますので、必ず担当医と漢方の専門家の両方にご相談ください。
春の養生で特に大切なことは何ですか?
朝の散歩で陽の気を取り入れること、酸味のある食材で肝をいたわること、夜は入浴でリラックスすることが大切です。「早寝早起き」よりも「早起き」を意識し、朝の光を浴びることを優先しましょう。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を目的としたものではありません。漢方薬の効果には個人差があります。症状が重い場合やお悩みが長引く場合は、医療機関の受診をおすすめします。漢方薬の服用にあたっては、必ず専門の医師・薬剤師にご相談ください。本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

よくある質問(FAQ)

Q. 漢方相談は予約が必要ですか?

ご予約をお勧めしています。初回は30〜60分ほどかけて丁寧にカウンセリングを行います。LINE・お電話・Web予約からご予約いただけます。

Q. 漢方薬の費用はどれくらいですか?

体質や症状により処方内容が異なるため費用も変わりますが、おためし2週間コース(9,800円)からお試しいただけます。まずはお気軽にご相談ください。

Q. オンラインでも漢方相談はできますか?

はい。銀座漢方天風堂薬局ではLINEやビデオ通話でのオンライン漢方相談に対応しています。遠方の方もご自宅から気軽にご相談いただけます。

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