春の胃腸不調と漢方|脾虚と肝気犯脾を体質別に整える薬剤師の処方指針
「食欲がわかない」「食後に胃がずっしり重い」「下痢と便秘を繰り返す」――桜が散り始めた4月、このような胃腸のご相談が当薬局に急増しています。
春は一年のうちで最も胃腸が乱れやすい季節です。朝晩の寒暖差、新年度の環境ストレス、花粉症による体力消耗、歓送迎会の飲食過多。これらが同時に胃腸を攻撃するため、もともとお腹が弱い方は悪化し、普段は平気だった方にも突然「食べられない」「お腹が張って苦しい」という症状が現れ始めます。
胃薬を飲んでみたり、ヨーグルトを毎朝食べたり、整腸剤を試してみたけれど、「一時的にマシになっても根本的に変わらない」「検査では異常がないのにずっとお腹の調子が悪い」「ストレスが増えるとすぐ胃にくる」と当薬局にご相談に来られる30〜50代の女性が後を絶ちません。
漢方の視点では、胃腸の不調は脾気虚(ひききょ)・肝気犯脾(かんきはんぴ)・湿困脾胃(しっこんひい)・脾腎陽虚(ひじんようきょ)という複数の体質要因が絡み合って生じる現象として捉えます。原因が違えば、整える方向はまったく異なるのです。
ドラッグストアの胃腸薬や漢方薬は「既製服」のようなもの。一般的な体質の方には合うこともありますが、あなたの胃腸で何が起きているかに合わせて仕立てたものではありません。特に春の胃腸不調のようにストレスと冷えと湿気が同時に脾を攻撃している状態では、煎じ薬による「オーダーメイドの処方設計」が力を発揮します。生薬の配合をあなたの体質に合わせて一つひとつ仕立てることで、その不調、"既製服"の漢方では届かない場所に届けることができるのです。
この記事では、春に胃腸不調が悪化する漢方的メカニズムと、体質4タイプ別の方向性・今日からできる養生の処方箋をお伝えします。
この記事の監修
柳澤 謙行(やなざわ けんこう)/銀座漢方天風堂薬局 薬剤師
薬剤師歴45年、漢方相談実績1万人以上。鍼灸師・臨床検査技師・ケアマネジャー資格保有。煎じ薬による体質改善を専門とする。
春に胃腸不調が増える漢方的メカニズム|「脾」「肝」「湿」の三重奏
漢方の古典には「脾は後天の本(こうてんのほん)」という言葉があります。脾(胃腸)は生まれた後のエネルギーを作り出す工場であり、この工場が止まれば全身に不調が波及する、という意味です。春はこの工場を三方向から同時に攻撃される季節なのです。
原因1:脾気虚 ― 寒暖差で胃腸のエネルギーが枯渇する
漢方で「脾(ひ)」は胃腸を中心とした消化吸収システム全体を指します。脾は食べ物から「気(エネルギー)」と「血」を生み出すポンプ。このポンプが弱ることを「脾気虚(ひききょ)」と呼びます。
春は一日の寒暖差が10度を超える日も珍しくありません。体温調節に膨大なエネルギーを消費するため、もともと胃腸が弱い方では脾のエネルギーが底をつきます。食欲がわかない・食後に異常に眠くなる・少し食べただけでお腹が張る・軟便が続く。これらが脾気虚のサインです。
原因2:肝気犯脾 ― ストレスが胃腸を直接攻撃する
漢方では春は「肝」の季節とされ、肝気が高ぶりやすくなります。肝は気の巡りを司る臓ですが、新年度の人事異動・人間関係の変化・生活リズムの乱れといったストレスで肝気が暴走すると、隣にある脾を攻撃し始めます。これが「肝気犯脾(かんきはんぴ)」です。
「ストレスが溜まると胃が痛くなる」「緊張するとお腹を壊す」「怒った後にゲップが止まらない」。心当たりのある方は多いのではないでしょうか。西洋医学の「脳腸相関」に相当する概念を、漢方は二千年前から肝と脾の関係として捉えてきました。
原因3:湿困脾胃 ― 春の湿気が胃腸を塞ぐ
春は梅雨に向けて湿度が徐々に上昇する季節です。漢方では「脾は湿を悪(にく)む」と言い、脾は湿気に最も弱い臓とされています。外界の湿気が体内に入り込み、胃腸の働きを重く塞いでしまう状態を「湿困脾胃(しっこんひい)」と呼びます。
胃がずっしり重い・口の中がネバネバする・体全体がだるくて重い・食後にお腹がパンパンに張る・舌に厚い白い苔がべっとり。雨の日にこれらの症状が悪化する方は、湿が胃腸を塞いでいる可能性があります。
なぜ春に全部が重なるのか ― 三方向からの同時攻撃
春が胃腸の最悪シーズンと言われるのは、寒暖差による脾の疲弊・ストレスによる肝の暴走・湿度上昇による脾の圧迫という三つの攻撃が同時に押し寄せるからです。もともと胃腸が弱い方は一気に悪化し、普段は平気だった方にも突然症状が出始める。これが当薬局で春に胃腸相談が急増する理由にほかなりません。
春の胃腸不調を生む三つの体内変化
脾気虚
寒暖差で
胃腸のエネルギー枯渇
肝気犯脾
ストレスで
肝が脾を攻撃
湿困脾胃
湿度上昇で
胃腸が重く塞がる
この三つが同時に重なるため、春は胃腸が最も乱れやすい
体質別|春の胃腸不調の4タイプとセルフチェック
同じ「春の胃腸不調」でも、体の中で起きていることはタイプによって大きく異なります。以下のセルフチェックで、ご自身がどのタイプに近いか確認してみてください。当薬局のご相談では、2つ以上のタイプが重なる方が6割以上を占めます。
タイプA:脾気虚型(食欲不振・疲労連動タイプ)【約40%】
- 食欲がわかない・何を食べたいかわからない
- 食後に異常に眠くなる
- 疲れやすい・午後から特にだるい
- 軟便が続く・便の形が崩れやすい
- 少し食べただけでお腹が張る
- 舌の縁にギザギザの歯痕がある
当薬局の春の胃腸相談で最も多い約40%がこのタイプ。胃腸のエネルギーそのものが不足しており、「食べたいのに食べられない」のではなく「食べたい気持ちすら湧かない」のが特徴です。無理に食べると余計にお腹が張って苦しくなる、という悪循環に陥っている方が少なくありません。
方向性と代表処方
六君子湯(りっくんしとう):脾胃を立て直す代表処方。食欲不振・胃もたれ・疲労感が重なる方にご案内することが多い一剤です。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):気を持ち上げて脾を補う処方。「だるくて起き上がれない」ほど疲労が深い方に用いられます。
四君子湯(しくんしとう):脾気を補う最もシンプルな基本処方。胃腸が弱く他の処方が重すぎる方の土台づくりに向くことがあります。
タイプB:肝気犯脾型(ストレス連動・下痢と便秘交互タイプ)【約30%】
- ストレスが溜まると胃が痛む・キリキリする
- 下痢と便秘を繰り返す
- ゲップ・おならが多い
- わき腹が張って苦しい
- イライラしやすい・怒りっぽい
- 生理前に胃腸の調子が悪化する
約30%がこのタイプ。ストレスや感情の波と胃腸症状が完全に連動しているのが見立てのポイントです。会議前にお腹が痛くなる、休日は平気なのに月曜になると調子が崩れる。こうした方は肝気が脾を攻撃している可能性が高いと当薬局では考えます。
方向性と代表処方
逍遙散(しょうようさん):肝気の鬱滞を解きほぐしながら脾を補う代表処方。ストレス性の胃腸不調・生理前の悪化にご案内することが多い一剤です。
柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう):肝を鎮め脾を立て直す処方。ストレスと食欲不振が同時に出る方に用いられます。
四逆散(しぎゃくさん):肝気の滞りを発散させる処方。わき腹の張り・ゲップ・胃の痛みが強い方に向くことが多い一剤です。
タイプC:湿困脾胃型(胃もたれ・食後悪化タイプ)【約20%】
- 胃がずっしり重い・もたれる
- 口の中がネバネバする・味がぼんやり
- 体全体が重だるい・動きたくない
- 食後にお腹がパンパンに張る
- 舌に厚い白い苔がべっとり付いている
- 雨の日に症状が悪化する
約20%がこのタイプ。外界の湿気と体内の余分な水分が胃腸を重く塞いでいる状態です。脂っこいもの・甘いもの・冷たい飲み物の摂りすぎが体内の湿をさらに増やし、悪循環が加速していることが多く見られます。
方向性と代表処方
平胃散(へいいさん):胃の湿を除いて消化を立て直す代表処方。食後の膨満感・胃もたれが主訴の方にご案内することが多い一剤です。
藿香正気散(かっこうしょうきさん):湿を除きながら気を巡らせる処方。梅雨時期や雨の日に胃腸が悪化する方に用いられます。
二陳湯(にちんとう):痰湿を除く基本処方。口のネバつき・舌苔が厚い方の土台づくりに向くことがあります。
タイプD:脾腎陽虚型(冷え連動・朝の下痢タイプ)【約10%】
- 明け方にお腹がゴロゴロして下痢をする
- お腹を触ると冷たい
- 温かいものを食べると楽になる
- 腰がだるい・重い
- 食欲がない・食べても美味しくない
- 手足が冷える・靴下なしでは眠れない
約10%がこのタイプ。脾と腎の両方の陽気(温める力)が不足し、胃腸を温めて動かすエネルギーが枯渇しています。「五更泄瀉(ごこうせっしゃ)」と呼ばれる明け方の下痢はこのタイプの典型的な症状で、加齢・過労・冷えの蓄積が背景にある方に多く見られます。
方向性と代表処方
真武湯(しんぶとう):腎陽を温めながら水を巡らせる代表処方。冷えが強く、明け方の下痢・めまいを伴う方に用いられます。
附子理中湯(ぶしりちゅうとう):脾と腎を同時に温補する処方。お腹の冷え・慢性下痢が頑固な方にご案内することが多い一剤です。
人参湯(にんじんとう):脾を温めて立て直す基本処方。冷えによる食欲不振・水っぽい下痢に向くことがあります。
複数のタイプが重なっている方へ
春の胃腸不調は、タイプA(脾気虚)とB(肝気犯脾)、タイプA(脾気虚)とC(湿困脾胃)が特に重なりやすい組み合わせです。「ストレスで胃が痛くなるし、食欲もない」「胃がもたれるし、雨の日は体が重い」という方は、複数の体質が同時に絡んでいます。この場合、既成のエキス剤1種類では肝を鎮める働きと脾を補う働きを同時に届けることが難しく、煎じ薬でのオーダーメイド処方が適していることがあります。
なぜ春の胃腸不調には煎じ薬がオーダーメイドなのか
「六君子湯を半年飲んでいるのに、胃の調子がいまひとつ変わらない」というご相談はとても多いです。六君子湯が悪いわけではありません。春の胃腸不調はストレスによる肝の暴走と湿の停滞が脾の疲弊に重なっていることが多く、一剤のエキス剤では複数の原因に同時に届きにくいのです。
煎じ薬の処方設計では、「脾を立て直す生薬」「肝を鎮める生薬」「湿を除く生薬」「お腹を温める生薬」を必要に応じて同じ一剤に配合することができます。しかも、その方の体質と症状の程度に応じて配合量を微調整できる。これが「あなたのための一剤を仕立てる」という煎じ薬の強みにほかなりません。
| 市販の胃腸薬・エキス剤 | 漢方専門薬局(煎じ薬) | |
|---|---|---|
| 考え方 | 症状を抑える(胃酸を止める・腸を止める) | 胃腸が乱れる原因(脾虚・肝気・湿)を見極めて体質を整える |
| 複合体質への対応 | 既成配合で固定(既製服) | 脾虚・肝気犯脾・湿困脾胃を同時に調整 |
| 季節・体調の変化 | 一度選んだら同じものを飲み続ける | 春夏秋冬・ストレスの増減・生理周期に合わせて配合を見直す |
| 下痢と便秘の交互 | 下痢止めか便秘薬か、どちらかを選ぶ | 腸の動きのムラの根本(肝気犯脾)を整える方向で設計 |
エキス剤が合わないわけではありません。体質がシンプルで、原因がひとつに絞られている方では、エキス剤でも十分に変化を感じていただけることがあります。春の胃腸不調のように「ストレスと湿気と冷えが同時に胃腸を攻撃する」状態では、生薬の配合をきめ細かく調整できる煎じ薬であれば、一剤の中で複数の方向性を同時に表現できる余地が広がります。
当薬局の春の胃腸相談 体質タイプ分布
※当薬局の春の胃腸ご相談における類型別内訳の目安。複数タイプが重なる方を含むため合計は100%を超える場合があります。医学的な診断・分類ではなく、漢方の体質判断の参考として掲載しています。
今日からできる春の胃腸の養生法|食事・生活習慣・ツボ
漢方薬と併せて、日々の養生で胃腸を守りましょう。春の胃腸養生のキーワードは「脾を養い、肝を鎮め、湿を除き、お腹を温める」です。
食養生:胃腸を守る春の食材
| 目的 | おすすめ食材 | 期待される働き |
|---|---|---|
| 脾を養う | 山芋、かぼちゃ、なつめ、白米のおかゆ、鶏肉 | 胃腸のエネルギーを補い、消化吸収を底上げする方向で働く |
| 肝を鎮める | セロリ、春菊、ミント、菊花、柑橘類 | 肝気の高ぶりを鎮め、胃腸への攻撃を和らげる方向で働く |
| 湿を除く | はと麦、小豆、とうもろこしのひげ茶、冬瓜 | 体内の余分な水分を排出し、胃腸の重だるさを軽減する |
| お腹を温める | 生姜、シナモン、ねぎ、紫蘇、黒糖 | 脾胃を温めて消化力を活性化させる方向で働く |
おかゆ養生のすすめ
漢方の古典には「粥は脾を養う第一の良薬」と記されています。白米のおかゆに山芋・なつめ・生姜を加えた「山薬大棗粥(さんやくたいそうがゆ)」は、脾気虚の方におすすめしたい養生食です。朝食を白米のおかゆに切り替えるだけで、胃腸への負担が格段に減ります。コツは「よく煮て柔らかくする」こと。硬い雑穀は脾が弱っている時期には負担になることがあるため、まずは白米のおかゆから始めてみてください。
生活養生:胃腸を守る4つの習慣
- よく噛んで食べる:一口30回を目標にしてみてください。噛むこと自体が消化の第一段階であり、脾の負担を大きく減らします。早食いは脾を最も疲弊させる習慣のひとつです
- 腹八分目を守る:「満腹」は脾にとって重労働。少し物足りないくらいで箸を置く習慣が、脾の回復を助けます。食後の眠気やお腹の張りが強い方は、まず食事量を2割減らすところから
- 冷たいものを控える:冷たい飲み物・生野菜・刺身などは脾陽(温める力)を奪います。飲み物は常温以上を基本に。サラダよりも温野菜、刺身よりも煮魚を選ぶ意識が養生になります
- 食後すぐ横にならない:食後30分は軽く歩くか座って過ごしましょう。食後すぐに横になると胃の内容物が逆流しやすくなり、消化の妨げになることがあります
おすすめのツボ:足三里・中脘・太衝
- 足三里(あしさんり):膝のお皿の下、外側のくぼみから指4本分下。胃腸を整える万能穴として二千年以上使われてきたツボです。「痛気持ちいい」強さで5秒押して離すを5回
- 中脘(ちゅうかん):みぞおちとおへその真ん中の位置。胃の働きを直接整えるツボです。温かい手のひらで覆うように5秒押して離すを5回。食後の胃もたれや膨満感に
- 太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨が合流する手前のくぼみ。肝気の滞りを発散させるツボで、ストレス性の胃痛・イライラに用いられます。両足を各5秒×5回
ツボ押しは日々の予防・胃腸が気になり始めた段階のケアとして使うほうが効果的です。入浴後・就寝前の習慣にすると、脾を養い肝を鎮める養生の処方箋になります。
控えたい食事・習慣
冷たい飲み物・生もの・甘いもの・脂っこいものの摂りすぎは、脾の消化力を低下させ湿を増やします。辛すぎるもの・アルコール(特にビール・冷酒)は胃の粘膜に負担をかけるため控えめに。カフェインの摂りすぎは肝気を高ぶらせ、胃酸分泌を増やすことがあるため、コーヒーは1日2杯までを目安にしてみてください。夜遅い食事も脾を疲弊させる大きな原因です。
よくあるご質問
| Q. 春になると胃腸の調子が悪くなるのはなぜですか? |
| A. 春は寒暖差が激しく、自律神経に大きな負荷がかかります。漢方では春は「肝」が高ぶりやすい季節とされ、肝気が暴走すると胃腸(脾)を攻撃する「肝気犯脾」の状態になりやすいと考えます。さらに春の湿気が脾の働きを鈍らせるため、食欲不振・胃もたれ・下痢・便秘が同時に出やすくなります。個人差があります。 |
| Q. 市販の胃腸薬と漢方の違いは何ですか? |
| A. 市販の胃腸薬は胃酸を抑える・腸の動きを止めるなど、症状を一時的に緩和する対症療法が中心です。漢方では脾気虚・肝気犯脾・湿困脾胃といった胃腸不調の根本原因を見極め、体質そのものを整える方向でアプローチします。「症状を止める」のではなく「胃腸が乱れにくい体質に整える」という発想の違いが、漢方の特徴です。煎じ薬では複数の原因に同時に対応する配合が可能です。個人差があります。 |
| Q. 胃腸不調で病院に行くべき目安は? |
| A. 急激な体重減少を伴う食欲不振、黒色便・血便、激しい腹痛や嘔吐、2週間以上続く下痢、50歳以降に初めて現れた便通異常は、消化器疾患の可能性があるためすぐに医療機関を受診してください。漢方相談は、医師の検査で重大な異常がないことを確認した後の慢性的な胃腸不調・体質改善にご活用ください。 |
| Q. 漢方薬はどれくらいで変化を感じますか? |
| A. 脾気虚型の食欲不振では、2〜4週間を一つの区切りとして体調の変化を観察し、必要に応じて処方を調整していきます。肝気犯脾型のストレス性胃腸不調ではストレスの波に合わせた柔軟な対応が必要になることもあります。湿困脾胃型・脾腎陽虚型では体質を整える目安として2〜3ヶ月以上をご案内することが一般的です。症状の程度や生活習慣によって異なりますので、漢方専門の薬剤師にご相談ください。個人差があります。 |
| Q. 過敏性腸症候群(IBS)にも漢方は使えますか? |
| A. 過敏性腸症候群(IBS)は、検査で器質的な異常が見つからないのに下痢・便秘・腹痛が続く状態です。漢方の視点では、IBSの多くは肝気犯脾(ストレスが胃腸を攻撃する状態)や脾気虚(胃腸のエネルギー不足)が背景にあると捉え、体質に応じた処方を組み立てます。下痢型・便秘型・混合型で方向性が異なるため、漢方専門の薬剤師による見立てをおすすめします。個人差があります。 |
胃腸不調の裏にある「本当の体質」|ダイエット・更年期・冷え・妊活との接点
実は胃腸不調でご相談に来られた方の多くが、体重の停滞・更年期症状・冷え・生理不順にも同時に悩んでいらっしゃいます。それは偶然ではありません。胃腸を乱す体質の根っこは、他の不調の根っこと共通しているからです。
| 胃腸不調の体質タイプ | 同じ根っこから来る他の不調 |
|---|---|
| 脾気虚 | ダイエット停滞の裏に潜む体質。脾が弱ると代謝が回らず、食事を減らしても体重が落ちない |
| 肝気犯脾 | 更年期・PMSと同じメカニズム。肝気鬱結はイライラ・のぼせ・不眠を同時に引き起こす |
| 湿困脾胃 | 冷え・むくみの根本原因。湿は水毒と表裏一体で、下半身の冷えとむくみに直結する |
| 脾腎陽虚 | 妊活の土台崩壊そのもの。腎は生殖を司り、脾は気血を生む土台。両方が弱れば子宮を温め育む力が不足する |
胃腸の症状だけを取るのではなく、体質の根っこを整えれば、ダイエットの停滞・更年期症状・冷え・むくみも一緒に動き出す。これが「あなたの一剤を仕立てる」煎じ薬の本領です。個人差があります。
まとめ|春の胃腸不調は「脾・肝・湿」の三つを同時に整える
春の胃腸不調は、寒暖差による脾の疲弊・ストレスによる肝の暴走・湿度上昇による脾の圧迫という三つの要因が重なって起きます。「春だから仕方ない」「市販の胃腸薬でやり過ごすしかない」と諦めるのではなく、原因に合わせて体質そのものを整えていく方向で考えてみませんか。
漢方には、脾を立て直す生薬・肝を鎮める生薬・湿を除く生薬・お腹を温める生薬を同じ一剤に配合できるという特徴があります。あなたの体質に合った処方を選べば、胃腸の不快感が少しずつ落ち着いていく方向を目指すことができます。
- 食欲不振・疲労連動 → 脾を立て直す方向(六君子湯・補中益気湯・四君子湯)
- ストレス連動・下痢と便秘交互 → 肝を鎮め脾を守る方向(逍遙散・柴芍六君子湯・四逆散)
- 胃もたれ・食後悪化 → 湿を除く方向(平胃散・藿香正気散・二陳湯)
- 冷え連動・朝の下痢 → お腹を温める方向(真武湯・附子理中湯・人参湯)
「複数のタイプが当てはまる」「市販の漢方薬では変化がない」「検査で異常がないのに胃腸が辛い」という方こそ、漢方専門の薬剤師にご相談ください。体質の見立てから、あなただけの一剤を仕立てます。
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免責事項
この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。漢方薬の効果には個人差があり、すべての方に同様の変化が現れるわけではありません。急激な体重減少を伴う食欲不振、黒色便・血便、激しい腹痛や嘔吐、2週間以上続く下痢、50歳以降に初めて現れた便通異常は、消化器疾患など緊急性の高い病気の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。漢方薬の服用を希望される方は、漢方専門の薬剤師または医師にご相談ください。妊娠中・授乳中の方は、漢方薬の服用前に必ず薬剤師または医師にご相談ください。記事内の情報は2026年4月時点のものです。
※本記事は東洋医学の考え方を情報として提供するものであり、特定の効果・効能を保証するものではありません。漢方薬の服用にあたっては、必ず専門の薬剤師にご相談ください。体調に不安のある方は医療機関への受診をお勧めします。個人差があります。
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