春の動悸・不安感と漢方|「心」の乱れを体質別に整える薬剤師の処方指針

春の動悸・不安感と漢方|「心」の乱れを体質別に整える薬剤師の処方指針
監修者:柳澤 謙行(やなざわ けんこう)
銀座漢方天風堂薬局 薬剤師 / 漢方相談歴15年以上
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為・個別の処方を行うものではありません。

春の動悸・不安感と漢方
「心」の乱れを体質別に整える薬剤師の処方指針

動悸・不安 - 動悸・不安に悩む40代女性のライフスタイル

公開日:2026年4月6日 監修:柳澤 謙行(薬剤師)

この記事でわかること

  • 春に動悸・不安感が増える漢方的な理由
  • 4タイプの体質別セルフチェック(気虚・血虚・神経型・熱タイプ)
  • 体質別おすすめ漢方薬(炙甘草湯・加味帰脾湯・柴胡加竜骨牡蛎湯など)
  • 今日からできる食養生と生活習慣の整え方

「最近、胸がどきどきして落ち着かない」「理由もないのに不安な気持ちが続く」――4月に入ってから、こうした訴えを持つ方が当薬局でも増えてきます。

新年度は、環境の変化・人間関係の刷新・生活リズムの乱れが一気に重なります。加えて、春特有の気温差と気圧変動が自律神経を揺さぶります。体は悲鳴をあげていても、「忙しいから」と後回しにしやすい時期です。

漢方では、動悸や不安感を「心(しん)」という臓腑の乱れとして捉えます。「心」は精神・意識・睡眠をも統括する臓であり、春の「肝(かん)」の影響を受けやすい位置にあります。体質に合った漢方と養生を組み合わせることで、根本から整えていく方向を目指します。

動悸・不安 - 漢方的メカニズムを表す静物

春と「心」の漢方的な関係

五行説では春は「木」の季節であり、「肝(かん)」が主役です。肝は気・血の流れを調節し、ストレスの処理とも深く関わります。

肝の働きが過剰になると(肝火・肝陽上亢)、その熱や気の上昇が隣接する「心(しん)」を刺激します。これが「肝火犯心(かんかはんしん)」と呼ばれる状態で、動悸・不眠・焦燥感を引き起こしやすくなります。

一方、冬に体力・血液を消耗した方では、春になっても「心」に十分な気血が届かず、些細な刺激で心拍が乱れやすくなります。同じ動悸でも、「熱で乱れる」か「不足で乱れる」かでは、対処の方向がまったく異なります。

春の動悸・不安感 発生メカニズム(漢方の視点)

春の変化
気温差・新年度ストレス
生活リズムの乱れ
肝の乱れ
気血の流れが乱れ
肝火・気滞が生じる
「心」への影響
動悸・不安感・不眠
心気虚タイプ → 気力・心拍のコントロール低下
心血虚タイプ → 血液不足で心が栄養されない
心神不安タイプ → ストレスで精神が揺らぐ
心火上炎タイプ → 熱が心を刺激し興奮状態に
動悸・不安 - 体質タイプ別漢方生薬

動悸・不安感の4タイプ:体質セルフチェック

自分がどのタイプに近いかを確認することで、漢方的な体質の目安がわかります。複数に当てはまる場合は、最も多くチェックが入るタイプが中心的な体質です。

体質セルフチェックリスト

タイプA:心気虚(しんききょ)型

「心のエネルギー不足」タイプ

  • 少し動いただけで動悸・息切れがする
  • 疲れやすく、声が小さくなりがち
  • 安静にしていてもときどき胸がどきどきする
  • 顔色が白っぽく、汗をかきやすい
  • 緊張や不安よりも「だるさ・無気力」が前面に出る

→ 関連処方:炙甘草湯、補中益気湯、桂枝加竜骨牡蛎湯

タイプB:心血虚(しんけっきょ)型

「心を養う血が不足」タイプ

  • 動悸と不眠・多夢がセットで出やすい
  • 顔色が黄色みがかって、くすみがある
  • 月経量が少ない、または月経後に悪化する
  • 物忘れ・集中力の低下が気になる
  • 爪が薄い・割れやすい、目がかすむ

→ 関連処方:加味帰脾湯、帰脾湯、酸棗仁湯

タイプC:心神不安(しんしんふあん)型

「ストレス・緊張で精神が揺らぐ」タイプ

  • 人前や緊張する場面で動悸が強くなる
  • 不安感・心配事が頭から離れない
  • ちょっとした物音や刺激でびくっとしやすい
  • 寝つきが悪く、夢をよく見る
  • 胸の締め付け感・喉のつまり感を感じることがある

→ 関連処方:柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯

タイプD:心火上炎(しんかじょうえん)型

「熱が心を刺激する」タイプ

  • イライラ・焦りと動悸がセットで出る
  • 顔が赤くなりやすい、のぼせ感がある
  • 口が渇く、口内炎ができやすい
  • 夜間に暑くて眠れない、寝汗をかく
  • 尿が濃い黄色になることがある

→ 関連処方:黄連解毒湯、三黄瀉心湯、加味逍遙散

動悸・不安 - 養生・セルフケア

体質別おすすめ漢方薬

以下に代表的な処方を紹介します。同じ処方でも体質に合わない場合は効果が出にくいことがあります。服用前に専門家への相談をおすすめします。個人差があります。

炙甘草湯(しゃかんぞうとう)

心気陰虚(気と陰液の両方が不足)の動悸に用いられることがある代表処方です。脈が速い・弱い・不規則といった「不整脈的な動悸」を整える方向で活用します。倦怠感・口渇・皮膚のかさつきを伴う方に合いやすい傾向があります。

含まれる主な生薬:炙甘草・桂枝・生地黄・麦門冬・阿膠・麻子仁・人参・大棗・生姜
こんな方に:疲れやすく脈が乱れがち、心臓が弱い感じがする方

加味帰脾湯(かみきひとう)

心脾両虚(心と脾臓の両方が弱った状態)に用いられる処方です。動悸・不眠・不安感がセットで出る「神経性の動悸」に多く活用します。当薬局にご相談に来られる方の中でも、特に30〜50代の女性に合いやすいと感じることが多いです。帰脾湯に柴胡・山梔子を加えた処方で、ストレスと血虚が重なるケースに向いています。

含まれる主な生薬:人参・黄耆・白朮・茯苓・酸棗仁・遠志・当帰・竜眼肉・柴胡・山梔子・甘草など
こんな方に:動悸と不眠・不安感が重なる、月経後に悪化する、疲れると動悸が増す方

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

ストレス・緊張・不安が強い「実証よりの心神不安」に用いられることが多い処方です。竜骨・牡蛎が精神を落ち着かせる方向で働き、動悸・不安・不眠を整えます。比較的体力がある方、胸脇苦満(みぞおちから脇にかけての張り感)がある方に合いやすい傾向があります。

含まれる主な生薬:柴胡・半夏・茯苓・桂枝・竜骨・牡蛎・大黄・人参・大棗・生姜
こんな方に:ストレスで動悸・不安が強まる、イライラと動悸が重なる、比較的体力がある方

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

虚証(体力が低めで繊細な体質)の心神不安に用いられる処方です。柴胡加竜骨牡蛎湯より体力が低く、神経質・敏感体質の方の動悸・不安・夢見が悪い状態を整える方向で使われることがあります。寝汗・疲れやすさを伴う方にも合いやすい傾向です。

含まれる主な生薬:桂枝・芍薬・甘草・大棗・生姜・竜骨・牡蛎
こんな方に:疲れやすく体力が低め、神経が細やかで敏感、寝汗をかく方

処方比較表:どの漢方が自分に合う?

主な4処方を体質・症状別に比較します。あくまでも目安であり、実際の処方は総合的な体質判断が必要です。

処方名 体力 主な対象症状 特徴的なサイン
炙甘草湯 虚〜中等 気陰両虚の動悸・不整脈感 脈が弱い・乱れる、口渇、皮膚乾燥
加味帰脾湯 虚〜中等 心血虚の動悸・不眠・不安 疲れると悪化、不眠・健忘を伴う
柴胡加竜骨牡蛎湯 中等〜実 ストレス性の動悸・不安・興奮 脇の張り感、イライラと動悸が連動
桂枝加竜骨牡蛎湯 虚証 神経過敏・不安・夢見が悪い 繊細体質、寝汗、精神的に疲れやすい

このような動悸は医療機関への受診を優先してください

  • 安静時にも頻拍が続く、または脈が飛ぶ
  • 胸痛・胸の圧迫感・息苦しさを伴う
  • 失神・意識消失のエピソードがある
  • 既往に心疾患・甲状腺疾患がある

漢方はあくまで補完的な位置づけです。上記症状がある場合は、まず循環器科・内科・心療内科での診察を受けてください。

動悸・不安 - 体質背景・銀座漢方天風堂

春の動悸・不安感を和らげる食養生と生活習慣

「心」を養う食材

漢方の食養生では、「心」を補うとされる食材を日常に取り入れることをすすめています。

「心」を補う・整える食材と主な働き

なつめ(大棗)
心血・心気を補う代表食材
百合根(びゃくごん)
心陰を潤し、不安・不眠を和らげる
蓮の実(蓮子)
心神を安定させる、下痢にも
クコの実(枸杞子)
肝・腎・心の血を補う
小麦(浮小麦)
甘麦大棗湯の基本食材、心神を養う
セロリ・三つ葉
肝気を疏通し、動悸の予防に

※食養生はあくまで補助的なものです。症状が強い場合は専門家にご相談ください。

生活習慣の整え方

春は「動きすぎない」ことも養生のひとつです。新年度の緊張が続く時期は、交感神経が優位になりがちで、心拍数が高い状態が続きます。

春の動悸を和らげる生活の4つのポイント

  1. 就寝前30分のデジタルデトックス――スマホ・SNSの情報刺激が心拍数を上げる最大の要因のひとつです
  2. 腹式呼吸(4秒吸って8秒吐く)――副交感神経を優位にし、動悸を落ち着かせる方向で働きます
  3. 起床・就寝時間の固定――睡眠リズムの乱れが「心」への負担を増します。特に春は夜更かしに注意です
  4. コーヒー・エナジードリンクの見直し――カフェインは心拍数を上げやすく、動悸が強い時期は控えめにする方向で整えます

動悸・不安感のご相談は銀座漢方天風堂薬局へ

体質に合った漢方をご提案します。お二人でのご相談も歓迎です。
営業時間:13:00〜19:00(土・日・祝日定休)

よくある質問(FAQ)

Q. 春に動悸が起きやすいのはなぜですか?
漢方では春は「肝」が活発になる季節で、気血の流れが上昇しやすくなります。肝の働きが乱れると「心」に影響が及び、動悸や不安感が出やすくなります。新年度のストレスや環境変化も重なりやすい時期です。
Q. 動悸に使う漢方薬の代表は何ですか?
炙甘草湯・加味帰脾湯・柴胡加竜骨牡蛎湯・桂枝加竜骨牡蛎湯などが代表的です。体質(気虚・血虚・ストレス型・熱タイプ)によって選ぶ処方が異なりますので、専門家への相談をおすすめします。
Q. 不安感・パニック症状にも漢方は向いていますか?
漢方では「心神不安」に対し、精神を落ち着かせる生薬(竜骨・牡蛎・酸棗仁など)を含む処方が用いられることがあります。ただし、精神科・心療内科での診察を前提とした補完的アプローチとして活用するのが適切です。
Q. 動悸の漢方は何ヶ月くらい飲めばよいですか?
急性の動悸は2〜4週間で変化を感じる方もいますが、体質改善を目的とする場合は2〜3ヶ月を目安に継続することが多いです。個人差がありますので、定期的に経過をご確認いただくことをおすすめします。

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銀座漢方天風堂薬局では、お一人おひとりの体質・生活習慣・症状をじっくりお聞きした上でご提案します。
初めての方もお気軽にどうぞ。お二人でのご相談も歓迎です。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療・処方を行うものではありません。漢方薬の服用にあたっては、体質・既往歴・服用中の薬との相互作用を考慮する必要があります。必ず専門家(薬剤師・医師)にご相談の上でご使用ください。効果・効能には個人差があります。記事内に記載の情報は執筆時点のものであり、最新情報と異なる場合があります。

※本記事は東洋医学の考え方を情報として提供するものであり、特定の効果・効能を保証するものではありません。漢方薬の服用にあたっては、必ず専門の薬剤師にご相談ください。体調に不安のある方は医療機関への受診をお勧めします。個人差があります。

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