銀座漢方天風堂薬局 薬剤師(薬剤師歴45年以上)
体質を見立てて生薬を組み合わせる「あなたの一剤」を仕立てる煎じ薬を中心に、冷え・婦人科・睡眠・疲労のご相談を専門とする。
6か月以上続く疲れと漢方|薬剤師が5タイプ別に見立てる慢性疲労の体質づくり
「半年以上、疲れが取れない」「土日にしっかり寝ても月曜の朝はぐったり」「動くと数日寝込む」——慢性疲労のご相談は、当薬局の問診票でも30〜40代女性のおよそ4割が訴える、最も多いお悩みのひとつです。一過性の春バテや連休明け疲れと違って、6か月以上続く疲労は、ベース体質が深く絡んでいるサインです。
中医学では、慢性疲労を5つの体質タイプに分けて見立てます。タイプを見立てずに同じ栄養ドリンクや同じ漢方を続けても、芯から元気は戻りません。この記事では、5タイプの見分け方と代表処方の使い分け、まず受診すべき疾患の鑑別、朝の養生をまとめます。
- 「6か月以上の慢性疲労」と一過性の疲れは何が違うのか
- 慢性疲労の中医学的メカニズム(5タイプの病態)
- あなたの慢性疲労がどのタイプか(5問×5タイプのセルフチェック)
- 脾気虚・気血両虚・腎虚・痰湿・気滞瘀血 5タイプの代表処方と使い分け
- 漢方の前にまず鑑別すべき疾患(甲状腺機能低下症・貧血・うつ病・ME/CFS など)
- 労作後倦怠感(PEM)と「副腎疲労」をどう捉えるか
- 慢性疲労の裏に隠れている、6大不調(冷え・婦人科・睡眠)との接点
- 朝・昼・夜の養生5つ
1. 「慢性疲労」とは|一過性の疲れとの違い
誰でも忙しい時期に疲れます。しかし、休んでも・寝ても・栄養を摂っても回復しない疲労が6か月以上続く状態は、別物として捉えるのが現代医学・中医学の共通認識です。代表的な病態として、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)が知られています。
| 区分 | 特徴 |
|---|---|
| 一過性の疲労 | 数日〜数週間で回復。睡眠・休息で楽になる。生活への支障は限定的。 |
| 慢性疲労(持続性) | 6か月以上の持続。休息で完全には回復しない。仕事・家事の質が落ちる。 |
| ME/CFS(疾患) | 6か月以上の重度疲労+労作後倦怠感(PEM)+休息で回復しない疲労+認知障害+起立性不耐症などを満たす医学的疾患。 |
6か月以上続く疲労の背景には、医療機関での治療が必要な疾患が隠れていることがあります。漢方を始める前に、内科・心療内科で以下の精査を済ませてください。
・甲状腺機能低下症(橋本病など):TSH・FT4・抗TPO抗体
・貧血・鉄欠乏:Hb・MCV・フェリチン
・糖尿病:HbA1c・空腹時血糖
・うつ病・適応障害:心療内科・精神科
・睡眠時無呼吸症候群(SAS):いびきと呼吸停止指摘・PSG
・副腎不全(Addison病):朝のコルチゾール
・ME/CFS:労作後倦怠感が48時間以上続く場合は専門医療機関へ
これらが除外できた段階で、漢方を体質づくりとして並走させる使い方をお勧めしています。
2. 慢性疲労の中医学的メカニズム|5タイプの病態
中医学では、人の活動エネルギーを「気・血・津液」で捉えます。気が足りないと動けず、血が足りないと脳と心が栄養できず、水分代謝が乱れると体が重くなり、巡りが滞ると同じ場所で消耗が続きます。これが崩れた病態を、当薬局では5タイプで整理しています。
| タイプ | 病態のイメージ | こんな方に多い |
|---|---|---|
| ① 脾気虚 (ひききょ) |
胃腸が弱り、食べ物から気を作る力が低下。動くとすぐ疲れる。 | 食欲低下・午後悪化・声に力なし・かぜを引きやすい・下痢傾向 |
| ② 気血両虚 (きけつりょうきょ) |
気と血の両方が消耗。脳と心も栄養不足になり、判断・記憶・気力が落ちる。 | 貧血傾向・動悸・物忘れ・眠りが浅い・産後・大病後・冷え |
| ③ 腎虚 (じんきょ) |
生命力の根幹である腎の気が消耗。深部の冷えや老化様の症状を伴う。 | 腰膝のだるさ・耳鳴り・夜間頻尿・足腰の冷え・更年期世代に多い |
| ④ 痰湿 (たんしつ) |
水分・脂質の代謝が滞って体が重くなる。気圧・湿度で増悪。 | 体重い・むくみ・胃もたれ・梅雨や雨で悪化・脂っこいもの好き |
| ⑤ 気滞瘀血 (きたいおけつ) |
慢性ストレスで気と血が滞り、同じ場所で消耗が続く。 | PMS・偏頭痛・肩こり・抑うつ・ため息・歯ぎしり・連休明け疲労 |
実際には「脾気虚+気血両虚」「腎虚+気滞瘀血」など、2つ以上のタイプが組み合わさっている方が大半です。当薬局では脈・舌・問診で、どのタイプがどの程度の比率で関わっているかを見立てたうえで、煎じ薬の配合を調整しています。
3. 慢性疲労セルフチェック|あなたはどのタイプ?
5タイプそれぞれ5問ずつ、当てはまる項目に印をつけてみてください。最も多く当てはまったタイプが、いまのあなたの主体質です。3つ以上当てはまるタイプが2つあれば混合型です。
① 脾気虚タイプ — 胃腸の弱りからくる疲れ
□ 朝より午後〜夕方の方が疲れがひどい
□ 声が出にくい、人と話すのが億劫
□ かぜを引きやすく、引くと長引く
□ 軟便・下痢になりやすい
② 気血両虚タイプ — 産後・大病後の消耗型
□ 立ちくらみ・めまいがある、貧血傾向
□ 動悸・息切れ、階段を上るのがつらい
□ 物忘れが目立つ、集中が続かない
□ 産後・大きな病気の後・大量出血の後から続いている
③ 腎虚タイプ — 深部の冷えと老化様の疲れ
□ 夜間にトイレで起きる(2回以上)
□ 耳鳴り・聞こえにくさがある
□ 足腰が冷える、特に夜布団の中でも温まりにくい
□ 髪が薄くなった・白髪が増えた・もの忘れが進む
④ 痰湿タイプ — 体が重く、湿度で悪化する疲れ
□ むくみやすい、特に脚と顔
□ 胃もたれ・げっぷ・吐き気がある
□ 雨の日・梅雨・気圧が下がる日に悪化
□ 脂っこいもの・甘いもの・お酒が多い、体重増加傾向
⑤ 気滞瘀血タイプ — ストレスで滞り続ける疲れ
□ PMS・月経前の不調が強い、月経痛で塊が出る
□ 偏頭痛・肩こり・歯ぎしりが慢性化
□ 抑うつ気分・興味関心が薄れている
□ 仕事や家庭でのストレスを6か月以上抱えている
4. ① 脾気虚タイプ|補中益気湯と六君子湯の使い分け
脾気虚タイプは「胃腸が弱り、食事から気を作る力が落ちている」状態です。代表処方は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)。黄耆・人参・白朮・甘草・当帰・陳皮・升麻・柴胡・大棗・生姜の10味で、胃腸の働きを高めて気を上に巡らせる配合で、疲労倦怠・食欲不振・かぜを引きやすい方に用いられます。
| 処方 | こんな方に |
|---|---|
| 補中益気湯 (ほちゅうえっきとう) |
疲労倦怠が強く、声に力がなく、かぜを引きやすい方。脾気虚の第一処方として広く使われます。 |
| 六君子湯 (りっくんしとう) |
食欲不振・みぞおちのつかえ・胃もたれが目立つ方。脾気虚に水滞が混じるタイプの第一処方です。 |
| 啓脾湯 (けいひとう) |
下痢傾向が強く、消化吸収が落ちている方。胃腸虚弱の慢性下痢に当薬局では煎じ薬の中で取り入れることがあります。 |
気を補う食材:白米のおかゆ・うるち米・かぼちゃ・じゃがいも・さつまいも・山芋・人参・鶏肉・なつめ・はちみつ
脾気虚の方は、生もの・冷たいもの・辛すぎるもの・脂っこいものが胃腸の働きをさらに落とします。朝食を温かいおかゆ・スープに切り替えるだけでも、午後の疲れの体感が変わる方が多いです。
5. ② 気血両虚タイプ|十全大補湯と人参養栄湯の使い分け
気血両虚タイプは「気と血の両方が消耗し、脳と心も栄養不足」の状態です。産後・大病後・大量出血後・慢性的な睡眠不足の方に多く見られます。代表処方は十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)。人参・黄耆・白朮・茯苓・甘草・当帰・川芎・芍薬・地黄・桂皮の10味で、四君子湯(補気)+四物湯(補血)に黄耆・桂皮を加えた配合で、疲労倦怠・冷え・貧血を伴う方に用いられます。
| 処方 | こんな方に |
|---|---|
| 十全大補湯 (じゅうぜんたいほとう) |
気血両虚の代表処方。冷え・貧血を伴う疲労倦怠、抗がん剤治療中の倦怠感、産後の消耗にも用いられます。 |
| 人参養栄湯 (にんじんようえいとう) |
十全大補湯に遠志・五味子・陳皮を加えた配合。咳・呼吸が浅い・物忘れ・不眠が混在する方。心身の消耗が極度に強い方に。 |
| 帰脾湯/加味帰脾湯 (きひとう/かみきひとう) |
気血両虚に不眠・不安が強い方。働きすぎ・育児疲れの背景がある方の第一選択になることが多い処方です。 |
冷えと貧血が中心なら十全大補湯方向、咳・呼吸の浅さ・物忘れも混在するなら人参養栄湯方向、不眠・不安が前面なら帰脾湯方向、と当薬局では見立てています。実際には脾気虚と気血両虚の境界はグラデーションで、煎じ薬で補中益気湯+四物湯のような組み合わせに仕立てるケースも多くあります。
6. ③ 腎虚タイプ|八味地黄丸と真武湯の使い分け
腎虚タイプは「生命力の根幹である腎の気が消耗」した状態です。腰膝のだるさ・耳鳴り・夜間頻尿・足腰の冷えが目立ち、加齢・更年期・慢性病で進みます。代表処方は八味地黄丸(はちみじおうがん)。地黄・山薬・山茱萸・茯苓・牡丹皮・沢瀉・桂皮・附子の8味で、腎陽を温めながら陰を補う配合で、疲労倦怠が著しく頻尿・口渇・手足の交互冷感がある方に用いられます。
| 処方 | こんな方に |
|---|---|
| 八味地黄丸 (はちみじおうがん) |
腎陽虚(深部の冷え)が中心で、腰痛・夜間頻尿・足腰の冷え・口渇を伴う方。 |
| 真武湯 (しんぶとう) |
高度の冷えとめまい・むくみが目立つ方。新陳代謝が落ちて消化器も冷えているタイプに。 |
| 牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん) |
八味地黄丸に牛膝・車前子を加えた処方。下肢のしびれ・むくみ・夜間頻尿が強い方に。 |
腎を補う食材:黒ごま・黒豆・くるみ・栗・松の実・山芋・牡蠣・あさり・海老・羊肉・ラム
腎虚の方は、冷たい飲み物・生もの・夜更かし・過度の性生活・過度の運動が腎を消耗させます。夜23時前に休む・腰を冷やさない・湯船に浸かるの3点を続けると、3か月単位で腰膝の重さが軽くなる方が多いです。
7. ④ 痰湿タイプ|六君子湯と平胃散の使い分け
痰湿タイプは「水分・脂質の代謝が滞り、体が重くなる」状態です。脂っこいもの・甘いもの・お酒・運動不足で進行し、梅雨・湿度の高い時期に悪化します。代表処方は六君子湯(りっくんしとう)。人参・白朮・茯苓・甘草・陳皮・半夏・生姜・大棗の8味で、脾胃を補いながら水滞を捌く配合で、胃腸が弱く食欲不振・胃もたれ・疲労倦怠を伴う方に用いられます。
| 処方 | こんな方に |
|---|---|
| 六君子湯 (りっくんしとう) |
脾気虚と痰湿が混じる方。食欲不振・胃もたれ・疲労倦怠を同時に整える配合です。 |
| 平胃散 (へいいさん) |
食べ過ぎ・飲み過ぎで胃腸に湿がたまっている方。短期的に湿をさばくのに使われます。 |
| 温胆湯 (うんたんとう) |
痰湿に熱が混じり、夢が多く・口苦・胃もたれを伴う方の眠りの養生に、当薬局では煎じ薬の中で用いることがあります。 |
8. ⑤ 気滞瘀血タイプ|加味逍遙散と柴胡加竜骨牡蠣湯の使い分け
気滞瘀血タイプは「慢性ストレスで気と血が滞り、同じ場所で消耗が続く」状態です。PMS・偏頭痛・肩こり・抑うつ・歯ぎしりが慢性化している方に多く見られます。代表処方は加味逍遙散(かみしょうようさん)。柴胡・薄荷・当帰・白芍・白朮・茯苓・甘草・生姜・牡丹皮・山梔子の10味で、気の巡りを開きながら血を補い、虚熱を冷ます配合で、月経不順・冷え症・更年期障害・血の道症を伴う方に用いられます。
| 処方 | こんな方に |
|---|---|
| 加味逍遙散 (かみしょうようさん) |
体力中等度以下で、PMS・冷え症・月経不順・更年期障害・抑うつを伴う方。女性の気滞瘀血の第一選択。 |
| 柴胡加竜骨牡蠣湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう) |
体力があり、動悸・不安・血圧高めで胸脇苦満(みぞおち脇のつかえ)がある方。 |
| 桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん) |
瘀血が中心で、頭痛・肩こり・経血色が暗く塊が多い方。煎じ薬で加味逍遙散と組み合わせるケースも多くあります。 |
9. PEM(労作後倦怠感)と「副腎疲労」をどう捉えるか
慢性疲労のご相談で必ず確認するのが、PEM(労作後倦怠感)と「副腎疲労」概念への向き合い方です。
ME/CFSの代表症状で、活動の12〜48時間後に症状が悪化し、数日〜数週間続きます。普通の疲労が「休めば回復」するのに対し、PEMは「休んでも回復しない・かえって悪化」が特徴です。当てはまる場合は、ME/CFSに対応している専門医療機関(神経内科・心療内科・国立精神・神経医療研究センターなど)での精査を最優先でお勧めします。漢方は補助的に体質を整える位置づけで並走させます。
「副腎疲労(adrenal fatigue)」は西洋医学では正式な疾患名としては確立されていません。一方、ME/CFS患者に軽度の副腎皮質機能低下が認められるという研究はあります。当薬局では、この概念に対応する病態として「気虚+腎虚+気滞」の混在型を見立てることが多く、補中益気湯・八味地黄丸・加味逍遙散などを煎じ薬の中で組み合わせる方向で整えます。ただし、強い倦怠感の背景に明らかなAddison病(原発性副腎不全)が隠れているケースもあるため、必ず内分泌内科でのコルチゾール検査を済ませてからご相談ください。
10. 朝・昼・夜の養生5つ
処方のご相談前後を問わず、生活面でできる養生は5つに整理できます。慢性疲労の方は、気力で全部やろうとせず、最初の2週間で1〜2つを取り入れ、続けられるものを増やしていく方向が現実的です。
- 起き抜けの白湯1杯+温かい朝食:脾気虚・腎虚の方は、冷たい朝食やコーヒーだけで朝を済ませると、午前中の気が立ち上がりません。白湯1杯→なつめ・龍眼を入れた温かいおかゆ・スープが理想です。
- 昼食後の15分の横臥:脾気虚と気血両虚の方には「子午の眠」が効きます。昼食後、椅子・ソファでの15分の横臥が、午後の疲れを大きく軽減する方向に整います。寝込まなくて良い、目を閉じるだけでも効果があります。
- 23時前の就寝:腎虚の方は、夜23時〜1時の胆経の時間帯に深い眠りに入っていることが、腎陰の回復に不可欠です。スマホ・SNSを22時で切り上げ、紙の本+暖色のスタンドライトに切り替えてください。
- 湯船に10〜15分:気滞瘀血と痰湿の方は、シャワーだけだと血流と水分代謝が動きません。40度の湯船に10〜15分、肩まで浸かるのが理想です。気滞の方はラベンダー・ベルガモットの精油1〜2滴で気の巡りが軽くなります。
- 「動かない日」を週1〜2日:PEMが疑われる方は、絶対に頑張ってはいけません。「予定を入れない・横になる・スマホも控える」完全休息日を週1〜2日設けることが、長期的な回復の唯一の道です。一過性の疲労と違い、慢性疲労は「動かない技術」が要ります。
11. 慢性疲労の裏にある本当の体質
慢性疲労は単独で起きる症状ではありません。当薬局でご相談に来られる方の問診票を304件分析したところ、慢性疲労を訴える方の多くが、別の不調も同時に抱えていることが分かりました。
| 慢性疲労の体質 | 同時に抱えやすい不調 |
|---|---|
| 脾気虚 | 食欲不振・下痢便秘・かぜを引きやすい・午後の眠気・胃もたれ |
| 気血両虚 | 貧血傾向・月経量減少・物忘れ・浅い眠り・産後の体調不良・妊活の停滞 |
| 腎虚 | 腰膝のだるさ・耳鳴り・夜間頻尿・更年期障害・足腰の冷え |
| 痰湿 | むくみ・ダイエットの停滞・梅雨時不調・胃もたれ・脂質異常 |
| 気滞瘀血 | PMS・生理痛・偏頭痛・肩こり・抑うつ・歯ぎしり |
気血両虚の方は妊活の土台が崩れている状態と地続きで、腎虚は更年期障害と同じ根を共有しています。痰湿はダイエットの停滞や胃腸の不調に潜み、気滞瘀血は生理痛・PMSと分かちがたい関係です。慢性疲労を「気合いで乗り切る毎日のイベント」として捉えるのではなく、ベースにある体質を一緒に見立てるのが煎じ薬の真価が出る場面です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 休んでも疲れが取れない状態が半年以上続いています。どこから手をつければいいですか?
6か月以上続く強い疲労感は、漢方より先に医療機関での精査をお勧めしています。特に、甲状腺機能低下症(橋本病)・貧血(鉄欠乏/フェリチン低値)・糖尿病・うつ病・睡眠時無呼吸症候群・副腎不全(Addison病)・筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)などは、見逃すと長期化します。当薬局では、内科・心療内科でこれらの鑑別を済ませた上で、漢方は体質づくりとして並走させる使い方をお勧めしています。脈・舌・問診で5タイプの比率を見立て、煎じ薬の配合を調整します。
Q. 補中益気湯を飲んでいますが、いまひとつ実感がありません。何が違うのでしょうか?
補中益気湯は脾気虚(胃腸が弱り気が不足するタイプ)の代表処方ですが、慢性疲労の方の多くは複数体質が混在しています。たとえば脾気虚と気血両虚(気と血の両方が消耗)が併発している方では、補中益気湯だけでは血を補う力が足りないことが多いです。十全大補湯や人参養栄湯への切り替え、または煎じ薬で配合を調整した方が体に合うことが多くあります。冷えや腰膝のだるさが目立つ方は腎虚も併発している可能性があり、補腎の生薬を組み合わせる方向で整えます。
Q. 副腎疲労と言われましたが、漢方は効きますか?
「副腎疲労」は西洋医学では正式な疾患名としては確立されておらず、ME/CFS患者に軽度の副腎皮質機能低下が見られるという研究はあります。当薬局では、この概念に対応する病態として「気虚+腎虚+気滞」の混在型を見立てることが多く、補中益気湯・八味地黄丸・加味逍遙散などを煎じ薬の中で組み合わせる方向で整えます。ただし、強い倦怠感の背景に明らかなAddison病(原発性副腎不全)が隠れているケースもあるため、必ず内分泌内科でのコルチゾール検査を済ませてからご相談ください。
Q. 労作後にぐったりして数日寝込みます。普通の疲労と何が違いますか?
活動の12〜48時間後に症状が悪化し、数日〜数週間続く現象は、ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)の代表症状であるPEM(労作後倦怠感)の可能性があります。ME/CFSは6か月以上の持続的な疲労、PEM、休息で回復しない疲労、認知障害、起立性不耐症などが診断基準に含まれます。普通の疲労が「休めば回復する」のに対し、PEMは「休んでも回復しない・かえって悪化する」のが特徴です。当てはまる場合は、ME/CFSに対応している専門医療機関での精査を最優先でお勧めします。漢方は補助的に体質を整える位置づけで並走させます。
本記事は一般的な漢方の考え方や養生をご紹介するもので、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。漢方薬の効果には個人差があります。妊娠中・授乳中の方、ホルモン療法・抗凝固薬・利尿薬・降圧薬・甲状腺ホルモン製剤・抗うつ薬・抗不安薬を服用中の方、医療機関で治療を受けている方は、必ず主治医・薬剤師にご相談のうえご利用ください。甘草を含む処方(補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯・六君子湯・加味逍遙散・芍薬甘草湯ほか)を他剤(利尿薬・降圧薬・ステロイド・グリチルリチン製剤など)と長期併用する場合は、低カリウム血症・偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・脱力)のリスクがあるため必ず薬剤師にご相談ください。附子を含む処方(八味地黄丸・牛車腎気丸・真武湯ほか)は、動悸・舌のしびれ等が出た場合は服用を中止してご相談ください。6か月以上続く疲労には、甲状腺機能低下症・貧血・糖尿病・うつ病・睡眠時無呼吸症候群・副腎不全・ME/CFSなど治療が必要な疾患が隠れている場合があるため、必ず内科・心療内科・内分泌内科などでの精査を先に済ませてください。本記事中の処方名・体質分類は当薬局の見立ての枠組みであり、実際のご提案はご相談の上で決定します。
銀座漢方天風堂薬局
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