監修者
柳澤 謙行(やなざわ けんこう)
銀座漢方天風堂薬局 薬剤師 / 漢方カウンセラー
中医学・経方医学をベースに、のべ1,000名以上の体質相談に対応。
春の肌荒れ・ニキビと漢方|体質別に整える漢方スキンケアの考え方
「春になると決まって肌が荒れる」「ニキビが増える時期がある」「化粧水を変えても改善しない」——そんなお悩みをお持ちの方は、皮膚の外側だけでなく、体の内側から整えるアプローチを知っていただきたいと思います。漢方では「肺主皮毛(肺は皮膚・産毛を主る)」という考え方があり、皮膚の状態は内臓の状態を映す鏡と捉えます。春の肌トラブルには、体質に応じた根本的なアプローチが有効な場合があります。
この記事でわかること
- 春に肌荒れ・ニキビが増える漢方的メカニズム
- 体質タイプ別(4タイプ)のセルフチェックと漢方の方向性
- タイプ別の食養生・避けたほうがよい食材
- 皮膚科と漢方を組み合わせる考え方
漢方が見る「皮膚と内臓のつながり」
西洋医学では皮膚科学(Dermatology)として皮膚の状態を局所的に診ますが、漢方(中医学)では皮膚を「内臓の状態が外に現れる場所」として捉えます。この視点の違いが、漢方スキンケアアプローチの出発点になります。
漢方の基本概念として、「肺主皮毛(はいしゅひもう)」という原則があります。肺は皮膚・産毛・毛穴を主り、肺気(肺のエネルギー)が充実していれば皮膚はうるおいと弾力を保ちます。肺気が弱まると、皮膚のバリア機能が低下し、乾燥・かゆみ・外邪(花粉・細菌・風寒)の侵入を受けやすくなります。
さらに春は「肝」の季節です。肝は気の流れ(気機)を調節する臓腑であり、春に肝気が亢進(過活発)すると、気の流れが滞り、熱が上方・外方へとうっ滞しやすくなります。この「熱」が皮膚に出ると、赤みやニキビ・湿疹として現れることがあります。
春の肌トラブルが起きやすい理由(漢方の視点)
- 肝気の亢進: 春は肝が活発になりやすく、気の流れが乱れると熱が皮膚に出やすい
- 冬の内熱の発散: 冬に蓄積した内熱(陰陽のバランスの乱れ)が、春の陽気上昇に伴って外に出やすくなる
- 気温変化・乾燥: 春の寒暖差が肺気を消耗させ、皮膚のバリア機能が低下しやすくなる
- ストレス・新生活: 春の環境変化がストレスとなり、肝気の鬱滞→気滞→血行不良→肌荒れにつながる
春の肌荒れ・ニキビ、4つの体質タイプ
当薬局に肌のご相談でいらっしゃる方を体質別に見ると、大きく4つのパターンに分かれます。自分がどのタイプに近いかをチェックしてみてください。同じ「ニキビ」「肌荒れ」でも、タイプによって漢方の方向性がまったく異なります。
タイプ1:血熱タイプ
こんな方に多い: 赤く炎症したニキビが頬・おでこに出やすい。体に熱がこもりやすく、怒りやすい
セルフチェック
- ニキビが赤く、触れると痛みや熱感がある
- 顔がほてりやすく、頬や鼻の周りが赤みがかっている
- 体が暑がりで、夜も暑く感じて眠れないことがある
- 口の中が苦い感じ、のどが渇きやすい
- イライラしやすく、感情の起伏が大きくなりやすい
- 舌が赤く(特に先端・縁)、苔は薄黄色または少ない
漢方的アプローチの方向性
「清熱涼血(熱を冷まし、血の熱を取り除く)」が基本方針です。炎症が強く赤みのあるニキビには、体の熱を清める方向性が中心になります。黄連解毒湯の方向性や、血熱を冷ます処方が適する場合が多いですが、熱の深さと場所によって使い分けが必要です。
食養生のポイント: アルコール・辛いもの・揚げ物・チョコレートを控える。緑茶・菊花茶・はと麦茶・豆腐・きゅうり・緑黄色野菜など体を冷やす食材を積極的に取り入れる。
タイプ2:脾虚湿熱タイプ
こんな方に多い: 白や黄色の膿を持つニキビ・皮脂が多い。甘いもの・脂っこいものが好き
セルフチェック
- Tゾーンや頬の皮脂が多く、テカリやすい
- 白または黄色みがかった膿を持つニキビが出やすい
- 胃腸が弱く、食後に胃もたれしやすい・軟便になりやすい
- 体が重だるく、むくみやすい
- 甘いもの・脂っこいものをよく食べる習慣がある
- 舌の苔が白く厚い、または黄色くべったりしている
漢方的アプローチの方向性
「健脾清熱化湿(脾胃を整え、湿熱を取り除く)」が基本方針です。根本には胃腸の弱さがあるため、皮膚だけでなく消化器系も同時に整える処方が必要です。荊芥連翹湯や、脾虚と湿熱を同時に処置する方向性が合う方が多いです。
食養生のポイント: 甘いもの・乳製品・揚げ物・冷たい飲食を控える。はと麦・緑豆・とうもろこし・春菊など湿熱を取り除く食材を活用する。
タイプ3:気滞血瘀タイプ
こんな方に多い: ニキビ跡が残りやすい・繰り返すニキビ。ストレスで悪化する・生理前に悪化する
セルフチェック
- ニキビが治っても跡が残りやすく(赤色・黒色の色素沈着)
- ストレスが増えると肌荒れが悪化する
- 生理前に必ずニキビが悪化する(女性の場合)
- 顎ラインや首周りにニキビが出やすい
- 肌がくすみやすく、血色が悪い印象を受けることがある
- 舌が暗紫色〜暗紅色、または舌縁・舌裏に瘀点(青紫の斑点)がある
漢方的アプローチの方向性
「疏肝理気・活血化瘀(肝気の流れを整え、血の滞りを改善する)」が基本方針です。根本にストレス・気滞があるため、気の流れを整えることが優先されます。桂枝茯苓丸の方向性や、気滞と血瘀を同時に改善する処方が合う方が多いです。
食養生のポイント: 気の流れを整えるために、こまめな休息・深呼吸・軽い運動を心がける。バラの花(ローズティー)・春菊・セロリ・ジャスミンティーなど、気の流れを良くする食材を取り入れる。
タイプ4:肺気虚・陰虚タイプ
こんな方に多い: 乾燥肌・粉吹き・細かいニキビ。体力が低く、疲れると肌が荒れやすい
セルフチェック
- 肌が乾燥しやすく、粉を吹いたり・かゆみを伴うことがある
- 疲れると肌荒れ・ニキビが出やすい(特に働き過ぎ後)
- 声がかすれやすく、のどの乾燥を感じやすい
- 睡眠が浅く、寝汗をかくことがある
- 手のひら・足のうらに熱感を感じることがある(五心煩熱)
- 舌が赤く乾燥気味、苔が少ないまたはない
漢方的アプローチの方向性
「補肺養陰・滋潤肌膚(肺を補い、陰液を養い、皮膚に潤いを与える)」が基本方針です。乾燥型の肌荒れには、熱を取り除くだけでなく「潤いを補う」アプローチが必要です。麦門冬湯の方向性や、陰を補う処方が合う方が多いです。
食養生のポイント: 潤い食材(白きくらげ・梨・蜂蜜・豆腐・百合根)を積極的に取り入れる。辛いもの・刺激物・アルコールは肺の陰液を消耗させるため控える。睡眠・休養をしっかり取る。
ニキビ・肌荒れの部位と体質の関係
中医学では、ニキビが出やすい部位によっても体質を読み取ることができます。あくまでも参考情報ですが、ご相談の際の手がかりになります。
| ニキビが出る部位 | 関連する臓腑・体質の傾向 | 漢方的方向性(参考) |
|---|---|---|
| おでこ・眉間 | 心火・肝気の亢進 | 清心・疏肝 |
| 鼻・Tゾーン | 脾胃の湿熱・消化機能の乱れ | 清胃熱・化湿 |
| 頬(左右) | 肺・肝の熱や気血の乱れ | 清肺熱・疏肝 |
| 顎ライン・口周り | ホルモン・気滞血瘀(女性に多い) | 疏肝・活血化瘀 |
| 背中・胸 | 肺熱・湿熱の発散 | 清肺・化湿 |
※ 上記はあくまで一般的な傾向です。実際の体質判断は舌診・問診などを総合して行います。ご自身での判断は難しいため、専門家へのご相談をおすすめします。
春の肌荒れを悪化させる「やりがちな習慣」
漢方の視点から見ると、次のような生活習慣が春の肌トラブルを悪化させることがあります。
1. 体を冷やす飲食の増加
春になって温かくなると、冷たい飲み物・アイスクリーム・生野菜サラダを多く取る方が増えます。漢方では冷えは気血の流れを停滞させ、皮膚への栄養供給を妨げると考えます。特に脾虚湿熱タイプの方は要注意です。
2. 睡眠不足・夜更かし
夜23時〜1時は「肝の時間」(中医学での臓腑の活動時間)とされており、この時間帯に睡眠が十分でないと肝血を消耗し、気血の流れが乱れやすくなります。肌の修復は睡眠中に行われるため、特に気滞血瘀タイプには睡眠が治療の一部です。
3. スキンケアの過剰・刺激の繰り返し
体内の熱や湿が原因のニキビに、外から刺激的なスキンケアを重ねても根本解決にはなりません。漢方では「外治(外からのケア)は内治(体内からの改善)の補助」という考え方があります。内側から整えることが基本です。
ご注意ください
本記事は漢方の考え方に基づいた一般的な養生情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎・脂漏性皮膚炎など皮膚科疾患については、まず皮膚科医の診察を受けることをおすすめします。漢方薬の選択・服用にあたっては、必ず薬剤師または医師にご相談ください。
肌のお悩み、漢方の視点でご相談ください
「毎年春になると肌が荒れる」「ニキビが繰り返す」「スキンケアを変えても改善しない」——そのようなお悩みをお持ちの方のご相談をお待ちしています。体質を丁寧に確認し、あなたに合った漢方の方向性をご提案します。
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よくあるご質問
※本記事は東洋医学の考え方を情報として提供するものであり、特定の効果・効能を保証するものではありません。漢方薬の服用にあたっては、必ず専門の薬剤師にご相談ください。体調に不安のある方は医療機関への受診をお勧めします。個人差があります。
