「以前なら平気だった家事や仕事でも疲れやすくなった」「午後になると急に体が重くなる」「朝起きても疲れが取れていない」…更年期を迎えると、こうした疲労感に悩まされる方が少なくありません。「なぜこんなに疲れるのだろう」と戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、東洋医学の視点から更年期の疲れやすさの特徴と、体質に合わせた活力を高める方法について解説します。自分でできる養生法から、専門家に相談するメリットまでご紹介します。
更年期の疲れやすさと東洋医学的な考え方
更年期に疲労感が増すメカニズム
更年期の疲れやすさは、西洋医学では女性ホルモンの減少が自律神経系や代謝に影響を与え、体のエネルギー産生や回復機能が低下することで起こると考えられています。また、更年期に伴う睡眠の質の低下も疲労感に影響します。
一方、東洋医学では「気・血・水」のバランスという観点から疲労を捉えます。特に「気」と「腎(じん)」の働きが重要とされます。東洋医学における「気」はエネルギーや活力の源、「腎」は生命力の根本を司る臓腑と考えられています。
東洋医学では「形は気を載せ、気は形を生ず」という考え方があり、目に見えない「気」の状態が身体の状態に大きく影響すると考えます。また、「腎は先天の本(せんてんのもと)」といわれ、年齢を重ねるにつれて腎の働きが徐々に弱まることで、様々な変化が起こると考えられています。
体質と疲労パターンの関連性
東洋医学では、疲れやすさの特徴も体質によって違いがあると考えます。以下に代表的な体質傾向と疲労の特徴をご紹介します。(あくまで一般的な傾向であり、個人差があります)
気虚(ききょ)傾向の方の疲労
- 少し動くだけでも疲れを感じる
- 声が小さく、話すのも疲れる
- 汗をかきやすく、風邪をひきやすい
- 午後に特に疲れを感じることが多い
血虚(けっきょ)傾向の方の疲労
- じっとしていても目の疲れや頭の重さを感じる
- めまいやふらつきを伴うことがある
- 顔色が青白く、唇の色が薄い
- 爪が割れやすく、肌が乾燥する
腎虚(じんきょ)傾向の方の疲労
- 腰や膝の力が入りにくい
- 疲れが翌日まで残りやすい
- 寝起きが悪く、朝の活動開始に時間がかかる
- 耳鳴りや頭髪の変化を伴うことも
気滞(きたい)傾向の方の疲労
- 精神的なストレスで疲労感が増す
- 胸や脇の張りを感じる
- ため息が出やすい
- 気分の波があり、イライラすると疲れを強く感じる
これらの体質傾向は混在することもあり、また生活習慣や季節によっても変化します。体質の傾向を知ることで、より自分に合った対応が見えてくることがあります。
体質別の活力を高める養生法
疲れの特徴や体質によって、日常生活での工夫の仕方も変わってきます。自分の体質傾向に合わせた養生法の考え方をご紹介します。
気虚(ききょ)傾向の方の養生法
体を動かす力が弱く、すぐに疲れてしまう方は、気を補うアプローチが基本となります。
食生活での工夫
- 消化の良い温かい食事を心がける
- 甘味のある食材を適度に取り入れる(さつまいも、かぼちゃ、人参など)
- 少量ずつ、複数回に分けて食べる
生活習慣での工夫
- 無理をせず、こまめに休息をとる
- 深呼吸や軽いストレッチを日課にする
- 適度な日光浴で気の巡りを促す
- 十分な睡眠を確保する
気虚傾向の方は特に「エネルギー配分」がポイントになります。一度にたくさんのことをするよりも、小分けにして行い、こまめに休息を取ることで疲労の蓄積を防ぎます。
血虚(けっきょ)傾向の方の養生法
目の疲れや頭の重さを感じやすい方は、血を補うアプローチが基本となります。
食生活での工夫
- 血を作る食材を意識する(レバー、ほうれん草、小豆など)
- 良質なタンパク質を適量摂る
- 鉄分やビタミンB群を含む食材を積極的に取り入れる
生活習慣での工夫
- 十分な睡眠を心がける(特に午後11時〜午前3時)
- 目の疲れを感じたらこまめに目を休める
- 入浴でゆっくり体を温める
- 無理な減量や過度な運動を避ける
血虚傾向の方は特に「質の良い睡眠」がポイントになります。東洋医学では「血は夜に肝に蔵される」と考え、質の良い睡眠が血を養うと考えられています。
腎虚(じんきょ)傾向の方の養生法
疲れが翌日まで残りやすく、腰や膝に力が入りにくい方は、腎を補うアプローチが基本となります。
食生活での工夫
- 腎を補う食材を意識する(黒豆、黒ごま、クルミ、栗など)
- 温性の食材を適度に取り入れる(生姜、羊肉、なつめなど)
- 良質なタンパク質を摂る(魚介類が特におすすめ)
生活習慣での工夫
- 適度な運動を継続する(特に下半身の筋力アップ)
- 腰や足元を冷やさないよう注意する
- 早寝早起きのリズムを整える
- 過労や過度なストレスを避ける
腎虚傾向の方は特に「無理をしない生活」がポイントになります。腎は蓄えるものであり、使い過ぎると回復に時間がかかるため、日々の蓄積と消費のバランスを大切にします。
気滞(きたい)傾向の方の養生法
精神的なストレスで疲労感が増す方は、気の巡りを改善するアプローチが基本となります。
食生活での工夫
- 香りのある食材を適度に取り入れる(柑橘類、香草、シナモンなど)
- 軽めの酸味のある食材を意識する(梅、酢、柑橘類など)
- 食事はリラックスした環境でゆっくりと
生活習慣での工夫
- ストレッチや軽い有酸素運動を取り入れる
- 深呼吸や腹式呼吸を意識的に行う
- 趣味や創作活動で気分転換する
- 自然の中で過ごす時間を作る
気滞傾向の方は特に「心と体の解放感」がポイントになります。体だけでなく心も緊張させず、リラックスした状態を意識することで気の流れが良くなり、疲労感が軽減することがあります。
漢方的アプローチの特徴
体質に合わせた考え方
漢方の大きな特徴は「その人の体質や状態に合わせたアプローチ」を大切にすることです。同じ「疲れやすさ」という症状でも、人によって原因や体の状態は異なるため、東洋医学では「証」と呼ばれる体質や状態を見極めることを重視します。
例えば、気虚でエネルギー不足の方と、気滞でストレスから疲れる方では、アプローチが大きく異なります。漢方相談では、詳しい問診や舌診、脈診などから一人ひとりの体質を判断し、体質に合った対応を考えていきます。
「補」と「巡り」のバランスを整える考え方
漢方的アプローチのもう一つの特徴は、「補う」ことと「巡らせる」ことのバランスを大切にすることです。体に必要な気や血を補うだけでなく、それらが体内でスムーズに巡ることも重要と考えます。
活力を高めるアプローチでは、以下のような視点で総合的に考えていきます:
- 食べ物の質と量、食べ方
- 活動と休息のリズム
- 季節や環境の変化への対応
- 精神的なストレス管理
- 体を温めることと冷やすことのバランス
漢方は即効性よりも、体のバランスを整え、自然治癒力を高めていくことを大切にします。そのため、生活習慣との組み合わせが特に重要と考えられています。
専門家に相談するメリット
銀座天風堂の漢方相談の特徴
天風堂薬局の漢方相談では、東洋医学の考え方に基づいた丁寧な問診と、舌診・脈診などを通じて、一人ひとりの体質や状態を総合的に判断していきます。
当薬局の特徴は以下の点にあります:
- 現代の生活スタイルに合った実践的なアドバイス
- 西洋医学との連携を大切にした総合的なアプローチ
- 一人ひとりの体質や生活リズムに合わせた細やかな対応
- 段階的な体質改善を目指した継続的なサポート
特に更年期の疲れやすさは、ホルモンバランスの変化だけでなく、これまでの生活習慣や体質の影響も大きいため、多角的な視点でのアドバイスを心がけています。
初回相談の流れ
天風堂薬局での初回漢方相談は、以下のような流れで進みます。
相談前の準備(あれば役立つもの)
- 疲れを感じる時間帯や状況のメモ(いつ頃から、どのような特徴かなど)
- これまで試してきた対策とその効果
- 服用中のお薬やサプリメントがあれば、その情報
相談当日の流れ
- 問診表へのご記入(約5分)
- 漢方薬剤師による詳しい問診(約20分)
- 疲労感の状態や特徴について
- 生活習慣や食事の傾向について
- その他の体調や過去の健康状態について など
- 舌診・脈診(約5分)
- 東洋医学的な体質の説明と養生法のアドバイス(約15分)
- 質問やご相談(約10分)
初回相談の所要時間は約50分〜60分です。あなたの体質や状態をしっかり把握するために、十分な時間をかけて対応させていただきます。
まとめと次のステップ
更年期の疲れやすさは、東洋医学では「気・血・水」のバランスの乱れ、特に「気」の不足や「腎」の働きの変化と関連が深いと考えられています。体質によって疲れの現れ方や対応が異なることが特徴です。
本記事でご紹介したポイント
- 疲れやすさには「気虚」「血虚」「腎虚」「気滞」などの体質傾向があり、それぞれ特徴が異なる
- 体質傾向に合わせた養生法の基本的な考え方があり、食事や生活習慣での工夫が大切
- 漢方的アプローチでは「補う」ことと「巡らせる」ことのバランスを大切にする
- 専門家への相談では、詳しい問診と舌診・脈診から個人に合ったアドバイスが受けられる
更年期の疲れやすさは、体質改善と適切な養生法で和らげることができます。ご自身のペースで、体質に合った対応を見つけていくことが大切です。
今回ご紹介した養生法の基本的な考え方を日常生活に取り入れながら、より詳しいアドバイスが必要な場合は、ぜひ専門家にご相談ください。天風堂薬局では、あなたの体質と状態に合わせた東洋医学的なアプローチをご案内しています。
※本記事は東洋医学における考え方をご紹介するものであり、効果効能を保証するものではありません。強い疲労感が続く場合は、医療機関への受診もご検討ください。