あなたの冷えはどのタイプ?5タイプ別 漢方の選び方を薬剤師が解説

あなたの冷えはどのタイプ?5タイプ別 漢方の選び方を薬剤師が解説
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あなたの冷えはどのタイプ?
5タイプ別 漢方の選び方を薬剤師が解説

冷え体質に悩む40代女性が膝にレッグウォーマーをかけて温める

「市販の漢方を試したけれど、冷えに変化を感じない」「冷え性に当帰芍薬散と聞いて飲んでみたけれど、合わない気がする」「夏でも足先が冷たく、夜は靴下を重ね履きしないと眠れない」「顔だけはほてっているのに、足は氷のように冷たい」——当薬局で冷えのご相談に来られる方の多くが、こうした「思ったのと違った」体感を抱えていらっしゃいます。

じつは、中医学では「冷え」をひと括りにしません。原因の違いによって少なくとも5つのタイプに分けて見立てます。タイプを取り違えると、体を温める方向の処方を飲んでいるのに体感が出ない、あるいは別のところに不調が出る——というすれ違いが起きやすいのです。

この記事では、薬剤師歴45年・のべ数万件の漢方相談に携わってきた経験から、30〜50代女性に多い5つの冷えタイプとセルフチェック、それぞれに合う代表処方と養生法を整理します。あなた自身の冷えがどのタイプかを見極めることが、整える第一歩です。

監修

柳澤 謙行(やなざわ けんこう)/銀座漢方天風堂薬局 薬剤師
薬剤師歴45年以上。前職を含めのべ数万件の漢方相談に従事。中医学理論に基づく体質の見立てと煎じ薬の提案を得意とし、冷え・更年期・妊活・自律神経領域で内科・婦人科・心療内科の処方との併用相談も数多く担当。

この記事でわかること

  • 冷えが5タイプに分かれる理由と、その背景にある気・血・水の考え方
  • セルフチェックで自分の冷えタイプが推定できる
  • 陽虚・血虚・瘀血・水滞・上熱下寒の5タイプそれぞれに合う代表処方
  • 市販品で体感が出にくかったときの見直し視点
  • タイプ別の食事・運動・入浴・ツボの養生法
  • 妊娠中・授乳中・夏のエアコン冷えへの漢方の使い方
  • 冷えの裏にある更年期・妊活・むくみ・PMSとの接点

はじめに:あなたの冷えは「気・血・水」のどこが原因?

中医学では、体を巡る要素を気(き)・血(けつ)・水(すい)の3つで捉えます。気はエネルギー、血は栄養、水は体液——どれが不足しても、どれが滞っても、体は冷えます。冷えのタイプが5つに分かれるのは、この気・血・水のどこに、どう異常が起きているかの組み合わせの違いです。

たとえば「気」のエネルギーそのものが足りないと全身が冷え(陽虚)、「血」が足りないと末端まで栄養が届かず手足だけ冷え(血虚)、「血」の流れが滞ると下半身に冷えと痛みが出ます(瘀血)。「水」の代謝が落ちるとむくみと冷えがセットになり(水滞)、気の巡り方に偏りが出ると、上半身は熱・下半身は冷えという真逆の症状が同時に出ます(上熱下寒)。

5タイプの早見表

陽虚(ようきょ)……気のエネルギー不足/全身冷え
血虚(けっきょ)……血の不足/手足末端の冷え
瘀血(おけつ)……血の流れが滞る/下半身冷え+痛み
水滞(すいたい)……水の代謝低下/むくみ+冷え
上熱下寒(じょうねつげかん)……気の偏り/顔ほてり+足冷え

あなたの冷えはどのタイプ?セルフチェック

冷え体質のサインを書き留めるノートと体温計

下のチェック表で、いちばん多く当てはまるタイプが、現在のあなたの冷えの主軸です。複数タイプにまたがる方も多く、その場合は煎じ薬で生薬を組み合わせる方向で整える対象になりやすいタイプといえます。

タイプ1|陽虚(全身が冷える)

  • 真冬でも夏でも、とにかく寒がり
  • お腹を触ると冷たい
  • 朝起きるのが辛く、日中も眠い
  • 顔色が白い、または青白い
  • 下痢・軟便になりやすい

タイプ2|血虚(手足の末端が冷える)

  • 手足の指先・つま先だけが冷える
  • 肌が乾燥しやすく、髪が細く抜けやすい
  • 立ちくらみ・めまいが起きやすい
  • 生理の経血量が少ない、または期間が短い
  • 夜中に足がつる

タイプ3|瘀血(下半身が冷えて痛む)

  • 腰から下、特に下腹部が冷える
  • 生理痛が重く、刺すような痛み
  • 経血に塊が混ざる
  • 肩こりが頑固で、揉んでも取れない
  • シミ・くすみが目立つ、唇の色が暗い

タイプ4|水滞(むくみと冷えがセット)

  • 夕方になると足がむくみ、靴がきつい
  • 梅雨時や雨の日に頭が重い
  • めまい・立ちくらみが起きやすい
  • 朝、まぶたや顔がむくむ
  • 水分を摂るとお腹がチャプチャプする

タイプ5|上熱下寒(顔は火照り、足は冷える)

  • 顔・耳・首までは火照るのに、足先は冷たい
  • 夜、寝つきが悪い、夢を多く見る
  • イライラ・気分の波が大きい
  • 頭痛・めまいを伴うことがある
  • 更年期世代に多い
冷えの5タイプを表す5つの漢方生薬の小皿

タイプ1:陽虚(ようきょ)— 全身が冷える・寒がり

どんな状態?

陽虚は、体を温めるエネルギー(陽気)そのものが不足した状態です。手足だけでなく、お腹や腰も触ると冷たく、夏でも靴下を重ね履きしないと眠れないというご相談が多いタイプ。加齢・過労・出産後・大病のあとに起こりやすく、当薬局では更年期前後の方に陽虚タイプが目立ちます。

朝起きるのがつらい、日中も眠い、お腹が冷えて下痢しやすい——こうしたサインは、陽気が消耗して全身を温める力が落ちている状態です。冷たい飲み物・生野菜・夏野菜・刺身を控え、温める食材(生姜・ねぎ・にら・羊肉・鶏肉・シナモン・山椒)を意識的に摂ることが養生の出発点になります。

代表処方

陽虚タイプには、真武湯(しんぶとう)・八味地黄丸(はちみじおうがん)・人参湯(にんじんとう)などが代表処方として用いられることがあります。真武湯は冷えとめまい・むくみ・下痢を併せ持つ方向、八味地黄丸は腰から下の冷えと頻尿・足腰の弱りを併せ持つ方向、人参湯は胃腸の冷えと食欲低下が中心の方向で整える対象になりやすい処方です(個人差があります)。

煎じ薬では、附子・乾姜・人参・桂皮などの温める生薬を、その方の体力・胃腸の強さ・併存症状に合わせて組み合わせる方向で見立てます。

タイプ2:血虚(けっきょ)— 手足の末端が冷える・乾燥

どんな状態?

血虚は、栄養を運ぶ「血」が不足し、末端まで届かなくなった状態です。指先・つま先がしもやけのように冷え、肌は乾燥し、髪は細く抜けやすくなります。生理の経血量が少なく、期間も短くなりがち。立ちくらみや夜中に足がつるのも、血虚のサインとされます。

30〜40代の働く女性、産後の方、ダイエットの繰り返しでお食事が偏った方に多いタイプです。血を補う食材(黒豆・なつめ・クコの実・レバー・ほうれん草・人参・黒ごま・赤身肉)を毎食少しずつ取り入れる養生が、整える方向の基本になります。

代表処方

血虚タイプには、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・四物湯(しもつとう)・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)などが代表処方として用いられることがあります。当帰芍薬散は血虚+水滞の方向、四物湯は血そのものを補う基本処方、十全大補湯は気と血を同時に補う方向で整える対象になりやすい処方です(個人差があります)。

煎じ薬では、当帰・芍薬・地黄・川芎などの補血の生薬に、消化を助ける生薬を加えるなど、ご相談者ごとに胃腸の強さに応じた組み合わせを見立てます。

タイプ3:瘀血(おけつ)— 下半身冷え・刺すような生理痛

どんな状態?

瘀血は、血の流れが滞ってよどんだ状態です。下腹部・腰回り・足が冷え、生理痛は刺すような痛みで、経血に塊が混ざります。肩こりは揉んでも取れない頑固なタイプで、シミ・くすみ・唇の色の暗さも瘀血のサインとされます。

長時間のデスクワーク、運動不足、ストレス、出産・流産後の方に多いタイプです。冷たい飲食を避け、青魚・玉ねぎ・らっきょう・酢のものなど血の流れを整える食材を取り入れ、軽い有酸素運動と入浴で物理的に温める養生が、整える方向の助けになります。

代表処方

瘀血タイプには、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・温経湯(うんけいとう)・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などが代表処方として用いられることがあります。桂枝茯苓丸は比較的体力のある方向、温経湯は瘀血+冷え+月経不順を併せ持つ方向、桃核承気湯は便秘を伴う方向で整える対象になりやすい処方です(個人差があります)。

妊娠中の方へ

桂枝茯苓丸・桃核承気湯は桃仁・牡丹皮など瘀血を強く動かす生薬を含むため、添付文書では妊娠中の使用は「投与しないことが望ましい」とされています。妊娠中・妊娠の可能性がある方は、これらの処方を自己判断で使用せず、必ず産婦人科医・薬剤師にご相談ください。

タイプ4:水滞(すいたい)— むくみと一緒の冷え

どんな状態?

水滞は、体内の水分代謝が落ちて、要らない水が滞った状態です。夕方の足のむくみ、朝のまぶたのむくみ、雨の日・梅雨時の頭重感・めまい・立ちくらみがセットで出やすいのが特徴。お腹を叩くとチャプチャプ音がする、水分を摂ると胃が重くなる方も水滞傾向です。

冷たい飲み物・甘いもの・脂っこいものの摂りすぎ、運動不足、湿気の多い環境で悪化しやすいタイプ。水を出す方向の食材(小豆・とうもろこしのひげ・はと麦・冬瓜・きゅうり・海藻)を取り入れ、足首・ふくらはぎを温める養生が、整える方向の基本になります。

代表処方

水滞タイプには、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・五苓散(ごれいさん)・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などが代表処方として用いられることがあります。当帰芍薬散は血虚+水滞、五苓散は急性のむくみ・頭痛・めまい、苓桂朮甘湯は立ちくらみ・動悸を伴う方向で整える対象になりやすい処方です(個人差があります)。

タイプ5:上熱下寒(じょうねつげかん)— 顔は火照るのに足は冷える

どんな状態?

上熱下寒は、気の巡り方に偏りが出て、上半身は熱がこもり下半身は冷えるという真逆の症状が同時に起きる状態です。顔のほてり、首から上の汗、夜の寝つきの悪さがあるのに、足先・お腹・腰は冷たい——更年期前後の女性にもっとも多いタイプとされます。

仕事のストレス、人間関係の緊張、考えごとが多い生活で、気が上に偏って下半身に届かなくなることが原因とされます。夜の入浴・足湯で下半身を温め、頭を使う時間を意識的に減らす養生が、整える方向の助けになります。

代表処方

上熱下寒タイプには、加味逍遙散(かみしょうようさん)・温経湯(うんけいとう)・女神散(にょしんさん)などが代表処方として用いられることがあります。加味逍遙散はストレス・イライラを併せ持つ方向、温経湯は冷えと月経不順、女神散はのぼせと不眠を併せ持つ方向で整える対象になりやすい処方です(個人差があります)。

上熱下寒タイプの詳しい見立てと処方の使い分けは、関連記事「春の冷えのぼせと漢方」で解説しています。

タイプ別 今日からできる養生法

冷え対策の足湯と温かいハーブティー

どのタイプにも共通して大切なのは、「冷やさない・動かす・補う」の3つの方向です。タイプ別に最低限押さえたい養生を整理します。

タイプ別 養生のポイント

陽虚……生姜・ねぎ・にら・シナモンを毎食。冷たい飲食は通年控える。お腹と腰を腹巻きで保温
血虚……黒豆・なつめ・クコ・レバー・ほうれん草を毎食少量。睡眠22〜26時を確保。目を酷使しない
瘀血……青魚・玉ねぎ・酢のもの。1日30分の早歩き。湯船に毎日浸かる
水滞……小豆・はと麦・冬瓜・海藻。ふくらはぎを意識的に動かす。冷たい飲み物を控える
上熱下寒……足湯(38〜40度・10分)。スマホを夜21時以降使わない。深呼吸で気を下に降ろす

入浴のすすめ

どのタイプにも共通する養生として、毎日の湯船入浴(38〜40度・10〜15分)を推奨します。シャワーだけでは深部体温が上がらず、冷えの土台は変わりにくいためです。湯上がりは靴下・腹巻き・首の保温で、温めた熱を逃がさない工夫を組み合わせると、体感が変わってくる方が多いです。

冷えの裏にある本当の体質

銀座漢方天風堂薬局の店内 — 体質の根っこから見立てる

冷えは、それ自体が独立した症状というより、気・血・水のバランスの崩れが「冷え」という形で表面化したサインです。だからこそ、冷えタイプを見極めることが、その奥にある慢性不調を整える出発点になります。

当薬局でご相談に来られる方の多くは、冷えだけでなく、別の悩みを同時に抱えていらっしゃいます。タイプ別に整理すると、こんな接続が見えてきます。

冷えタイプ × 慢性不調の接続

  • 血虚タイプ……経血量が少ない・髪が抜ける・肌が乾燥するという血の不足は、妊活の土台が崩れている状態そのものです。血を補う方向で整えながら、冷え対策と妊活を同じ軸で進める方が多いです
  • 水滞タイプ……冷えとむくみがセットになる方は、ダイエットが停滞する体質の裏にも水滞が潜んでいることが多く、水を出す方向で整えると体重・浮腫・冷えが同時に動きやすくなります
  • 瘀血タイプ……刺すような生理痛・頑固な肩こり・経血の塊は、PMSや子宮内膜症の体質背景と重なります。瘀血を流す方向で整えなければ、生理トラブルの根本は変わりにくいです
  • 上熱下寒タイプ……顔のほてり・寝つきの悪さ・気分の波は、更年期のホットフラッシュと同じメカニズムです。気を下に降ろす方向で整えると、不眠と冷えが同時に整いやすくなります
  • 陽虚タイプ……全身の冷えと倦怠感は、慢性疲労・自律神経のゆらぎの土台にもなっています。陽気を補う方向で整えることが、疲れにくい体への近道になります

冷え単独の対策ではなく、冷えを入口に、その裏にある体質の根っこから整える——それが、慢性不調をくり返さない方向の見立てです。煎じ薬では、ひとつのタイプに固執せず、ご相談者の体質に合わせて生薬を組み合わせる方向で、あなたの一剤を仕立てる対象になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 市販の冷え対策の漢方を試しましたが効果を感じません。なぜですか?

冷えは中医学では少なくとも5タイプに分かれ、タイプを取り違えると体感が出にくくなることが多いです。たとえば「冷え=当帰芍薬散」と決めつけて服用しても、瘀血や上熱下寒のタイプには方向違いになります。当薬局では、セルフチェックでタイプを推定したうえで、生薬の組み合わせを見立てる方向で整えます。市販品で体感が出にくかった方は、まずタイプ判定からご相談ください(個人差があります)。

Q. 妊娠中に飲める冷え対策の漢方はありますか?

妊娠中は処方の選択に注意が必要です。一般に瘀血を強く動かす桂枝茯苓丸や桃核承気湯は添付文書で「投与しないことが望ましい」とされ、体を温めるが穏やかな当帰芍薬散などが選択肢になることが多いです。ただし、妊娠週数・体質・併用薬によって判断が変わるため、必ず産婦人科医とご相談のうえ、薬剤師の見立ても受けてください。当薬局では妊娠中・授乳中の漢方相談も承っています(個人差があります)。

Q. 夏でも冷えを感じます。エアコン冷え対策にも漢方は使えますか?

はい、夏のエアコン冷えに漢方相談に来られる方は近年増えています。夏でも体の内側の陽気が消耗していると、外気が暑くても手足や下半身は冷えます。陽虚や水滞のタイプが多く、当帰芍薬散・真武湯・苓桂朮甘湯などを使い分ける方向で整えます。冷たい飲食を控え、足首・腰回りを温める養生と並行することで、夏でも冷えにくい体に整えやすくなります(個人差があります)。

Q. 冷えと不眠は関係がありますか?

深く関係しています。とくに上熱下寒タイプ——顔やのぼせは火照るのに足先は冷たいタイプ——は、就寝時に頭が冴えて寝つけない、夜中に何度も目が覚めるという不眠を伴うことが多いです。これは気が上に偏り、下半身に届いていないサイン。加味逍遙散や温経湯で気を巡らせながら、就寝前の足湯・足首温めの養生を組み合わせると整いやすくなります(個人差があります)。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効能効果を保証するものではありません。漢方薬の選択・服用は個人の体質・症状・既往歴・併用薬によって異なり、効果には個人差があります。妊娠中・授乳中・持病のある方・処方薬を服用中の方は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。本記事内の処方名は代表例であり、実際の見立ては当薬局の薬剤師が個別にお伺いした上で行います。

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